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【河北新報】 東日本大震災 在宅被災者/「最後の一人まで」忘れまい

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 東日本大震災は発生から5年3カ月が経過した。
 既に集中復興期から復興・創生期へと場面転換した被災地にあって、時計の針が止まったままの人たちがいる。経済的事情などで損壊した住宅にとどまらざるを得ない「在宅被災者」だ。
 外見は目立った損傷が見当たらない家屋だが、一歩、中に足を踏み入れると畳がめくれ挙がり、家具が散乱。住人は津波が押し寄せた1階を放棄して2階で暮らす。
 風呂が使えなかったり、簡易コンロで煮炊きしたりの生活が5年以上続く。雨漏り、カビの発生など住環境は劣悪を極める。
 こうした実態が最近、仙台弁護士会と在宅被災者を支援する一般社団法人「チーム王冠」の調査により、ようやく明らかになりつつある。
 調査によると、家屋の修繕に要する費用は平均500万円。これに対し、国の応急修理金は52万円が支給上限で、自治体の上乗せ分を合算しても全く足りない。
 ネックになっているのは、財務省などに根強い「私的財産の形成に公費は支出できない」という考え方だ。
 確かに、平時に単体として見れば住宅は個人資産かもしれない。だが、その修繕は地域の復興と密接な関係にあり、災害対応ではある種の公共性を帯びると捉えるべきだ。
 在宅被災者を過酷な住環境に固定化させてしまった要因の一つに、一度国の応急修理制度で自宅を修繕してしまうと仮設住宅には入居できないというルールが挙げられる。
 公的支援の二重取りを防ぐためではあるが、被災者の生活再建は時間の経過とともに変更があって当然だ。関係機関に柔軟な対応を望みたい。
 もう一つ見過ごせない問題に在宅被災者の貧困がある。調査では世帯の7割超が65歳以上で、収入を年金に依存していた。3割の世帯は生活保護の受給を申請しても不思議でない経済状態にあった。
 ここでネックになっているのは、一般に持ち家があると生活保護を受給できないというルールだ。資産価値が消滅した被災家屋に対する特例もあるはずだが、現場レベルでは十分周知されていない。
 各種の公的支援メニューがありながら、その隙間に落ち込んで身動きできない在宅被災者の存在は、震災から5年以上が経過してなお「制度の壁」が復興の妨げになっていることの証拠でもある。
 同時に、この震災の復興が「人間の復興」から懸け離れていることを示唆しているのではないだろうか。
 現状を改善するには、被災者生活再建支援制度の見直しが必要だ。
 「住宅の損壊程度」「世帯単位」という支援金支給基準に「被災者が置かれた状況」を加味したらどうか。支給対象を賃貸住宅に転居する際の家賃補助にも拡大すべきだ。
 被災地では、やはり経済的事情で仮設住宅からの転居先を決められない被災者の問題も浮上している。
 創造的復興に思いをはせるのは大事だが、まなざしを傍らの困窮被災者に向けることも忘れてはならない。復興は「最後の一人まで」である。

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