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【FinancialTimes】 ドラギ総裁、ECBの信認維持に腐心

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 今週の欧州中央銀行(ECB)理事会は、ECBが「しないこと」よりも「言わないこと」が注目に値する結果となった。景気見通しがおおむね変わらず、一連のデータが今夏のユーロ圏の堅調な成長を示すなか、金融政策の現状維持という判断は妥当だ。しかしながら、先行きにさらなる刺激策が必要となった場合、ドラギECB総裁が手詰まり状態になることが懸念される。 記者会見するECBのドラギ総裁(8日、フランクフルト)=ロイター
 ECBが直面している難局は全ての主要国の中央銀行に共通する。すなわち、すでに金融政策を未知の領域の深くまで進めた状態で、新たな刺激の源泉をどう見いだすのか。ECBのマイナス金利政策は効果が表れているが、収益を脅かされる民間銀行が猛反発している。ヘリコプターマネーのような急進的な選択肢は議題に上がっていない。
 さらなる金融緩和が必要となった場合、ECBにとって最も明らかな道筋は現行の量的緩和の期間延長だろう。しかし、来年3月まで月間800億ユーロの資産購入を続けるという現在のプログラムでさえ、対象とする資産の基準を緩めなければ遂行が苦しくなりかねない状態だ。中央銀行のリスクテークの拡大、つまり重債務国の国債購入に道を広げるルール変更は、ドイツをはじめとする国々の強硬な政治的反発を招くだろう。
 それでもなお、ドラギ氏は今週の理事会で量的緩和の期間延長を発表するのではないかという観測もあった。だが、ドラギ氏は資産購入プログラムの設計に技術的な問題があったと認める一方で、延長についての議論はなかったと述べた。プログラムの問題点については内部委員会が評価にあたっている。
 ドラギ氏は明らかに、もっと踏み込んだ発言をしたかったはずだ。ドラギ氏は、現在の市中金利の低さは金融刺激策が今後も続くという見方を反映していると指摘し、必要である限り量的緩和を続けるという大まかな方針を改めて示した。そして、ECBの意思や余力、能力に疑問の余地はないと述べた。
 このような表明で当面の必要は満たされても、ECBの次の一手まで明示できなければ長くは持たない。
■妨害ではなく政治的支持を
 ECBの金融刺激策は効果を生んでいるというドラギ氏の主張は正当だ。ドラギ氏の2012年以降の金融刺激策は持続的な景気回復を下支えし、今では心強いことに個人消費が不安定な外需に代わって回復を主導している。しかし、成長率は依然、生活水準の持続的な向上に必要なレベルを大きく下回ったままだ。加えて、昨年の原油価格急落が前年比較から消えればインフレ率は上向くことになるが、ECBの予測では、物価の基調に「確たる上昇傾向」がないなかでインフレ率は目標を大幅に下回り続ける見通しだ。したがって、多くのエコノミストがECBはさらなる行動を求められるとみている。
 ECBにとって、インフレ期待は安定していると主張することはますます難しくなっている。ドラギ氏は、専門家のインフレ期待がかなり安定していることにいくらかの慰めを得られるが、ドイツの賃金の伸び悩みなど、実体経済の動向に不安が生じていることはやはり認めざるを得なかった。
 このような状況の中で、特にドイツのようにドラギ氏の足を引っ張ろうとするのは大間違いだ。ECBの金融刺激策は効果を生んでいる。そのECBが必要としているのは妨害でなく政治的支持だ。ECBが余裕のある国々から財政政策による支援を得て、もっと踏み込めていれば、ユーロ圏は今よりも良い状態になっていたはずだ。

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