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【熊本日日新聞】 震災関連死増加 「救えたはずの命」の検証を

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 熊本地震に伴う県内の震災関連死が53人となり、直接死の50人を上回った。関連死の認定審査は各市町村の災害弔慰金等支給審査委員会で続いており、今後も増える可能性がある。熊本地震の犠牲者は、6月の大雨による「二次災害」の死者5人を含め108人となり、深刻な被害の広がりをあらためて裏付けた。
 熊本市が新たに関連死と認めた6人には、生後約3週間の女児もいた。新生児の認定は初めてだ。妊娠5カ月だった女児の母親は車中泊を約10日間強いられ、切迫早産の疑いがあると診断された。かかりつけ医も被災しており、県外の病院に入院。羊水の真菌感染が分かり帝王切開で出産したが、女児は敗血症で死亡した。体重は466グラムだった。車中泊や風呂に満足に入れない環境などの影響が指摘されている。
 これまでに7市町が発表した関連死53人のうち、本紙の取材によると、少なくとも20人が車中泊や車中避難を経験している。過酷な環境で、エコノミークラス症候群を発症したり、体調を崩したりするケースが目立つ。
 命を守る施設である病院や福祉施設が被災し、転院や移動を余儀なくされた例も多い。合志市の4歳女児の場合、入院していた熊本市民病院が被災したため転院を求められ、県外の病院に到着した5日後、息を引き取った。「病院は一番安全な場所であってほしい」と訴える両親の声を重く受け止めるべきだ。
 また死者53人のうち70歳以上が約8割を占めている。避難生活の負担や転院などの環境の変化は、乳幼児や高齢者など「災害弱者」に対して、より過酷な状況をもたらしたと言えよう。
 関連死の申請を却下された遺族の中には、不服申し立てをした人もいる。地震との因果関係の判断が難しい事例もあるだろうが、市町村ごとにばらつきのない認定基準を確立し、遺族への十分な説明を果たすことも不可欠だ。
 関連死とは本来、「救えたはずの命」だ。どのような状況が死を招いたのか、すべての事例を一つ一つ検証することが必要だ。遺族のプライバシーへの配慮はもちろん欠かせないが、行政側が可能な限り情報を開示し、社会全体で共有することが熊本地震の教訓となろう。
 今後は、被災者の「孤立化」を防ぐ必要がある。被災した15市町村では、被災者の日常生活を支える「地域支え合いセンター」が順次スタートしている。生活支援相談員を中心に、健康維持や悩みごと解消、住民同士の交流などを後押しし、生活再建と自立を支援する試みだ。リハビリテーションの専門家による介護予防教室も始まっており、こうした複眼的なネットワークの構築で、被災者の生活を見守りたい。
 東日本大震災では、数年が経過した後も関連死が相次いだ。熊本地震から5カ月半。命を守るために、これからの取り組みが問われている。

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