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【FinancialTimes】 トランプ氏は米欧同盟を維持せよ

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 この70年間、歴代の米国大統領は欧州統合と防衛協力を米国の経済的利益に直結するものとして扱い、西側全体の平和と繁栄を支えてきた。今週、トランプ次期米大統領はインタビューで、強い欧州連合(EU)あるいは強い欧州諸国は米国の国益に資するかと問われた。同氏の答えはこうだ。「米国にとって重要なことだとは思わない。別々だろうがまとまろうが、かまわない」 NATOに関するトランプ氏の発言は、欧州首脳を驚かせた=AP
 トランプ氏が公然と示した無関心ぶりは根本的に間違っている。同盟国は重要だ。冷戦期であれ米同時テロ後であれ、実証されている同盟関係ならなおさらだ。他の発言の多くと同様に、トランプ氏のこの発言はほどなく修正されるのかもしれない。だが、それでも無責任で危険な発言であることは変わらない。
 むろん、トランプ氏が繰り出す発言は、昨年11月の大統領選で同氏を勝利に導いた政治論と完全に合致している。トランプ氏の世界観の柱は国家アイデンティティー、厳しい国境管理、ゼロサムの重商主義の経済、ビジネスに対する規制への嫌悪だ。欧州については──もっともな部分もあるが──世界主義、開かれた国境、自由貿易、包括的な規制を象徴する存在だと思っている。トランプ氏にとって、政治は勝者と敗者に分かれる取引の連続だ。EUについても同じで、EUは欧州大陸の「勝者」であるドイツのための「乗り物(道具)」だと切り捨てる。当然、どんな反証があろうと他の国々は敗者でなければならない。
 したがって、トランプ氏が英国のEU離脱を自分が正しいとする証拠と見なすのも驚くには当たらない。ほぼ公然と、さらなるEU離脱もあおっている。だが、トランプ氏のEU懐疑論は米国の経済的繁栄と安全保障に反する。経済成長を高めるというトランプ氏の計画は、世界の需要と金融市場の安定に依拠する。EUが大きくつまずけば、景気後退や金融危機がにわかに現実味を帯びる。国境管理と関税の強化が現実化すれば、長期的な成長率低下につながる。つまり、欧州は米国製品のより良い市場にならなくなる。
 安全保障に関しては、米国とEUの利益はさらに緊密に結ばれている。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)に対する姿勢を軟化させてもなお、「はるか昔につくられた」のだから「時代遅れ」だと言う(NATOはトランプ氏より3歳若い)。一部のNATO加盟国が応分の費用を負担していないことへの不満は、オバマ政権の立場を踏襲している。問題は、NATOも相手と張り合う取引の一つにすぎないと捉えていることだ。おそらくトランプ氏は、NATOと欧州両方の敵であるロシアと良い取引ができると示唆しているのだろう。
■米国に欧州以上の友人はいない
 西欧が長く平和を享受してきた大きな理由は、欧州の力の結束が米国の最優先事項となる一方で、ロシアはおおむね正当な疑いの目で扱われたことにある。トランプ氏がなぜ、この戦略上の立ち位置を放棄したのかはわからない。欧州は絶望的な衰退の中にあり、価値の低いパートナーだと見ているのかもしれない。あるいは世界のバランスの中心から中国を遠ざけるために、ロシアを引き込もうとしているのかもしれない。あるいはまた、直感的に動いているだけかもしれない。
 いずれにせよ、トランプ氏の欧州に対する立ち位置は間もなく変わるかもしれないと考えられる理由が2つある。第一に、国防長官や米中央情報局(CIA)長官などトランプ次期政権の主要メンバーの一部が、対ロシア強硬派であること。第二に、来週にはもうトランプ氏は大統領に就任している。もはや、外側から既成秩序に言葉の発煙弾を投げ込む立場ではなくなる。物事が自分の身に降りかかり始めるのだ。そうなると友人が要る。そして、米国に欧州以上の友人はいない。

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