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【FinancialTimes】 メイ首相の離脱方針明確化はひとまず歓迎

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 英国のメイ首相が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)に関し、基本方針をようやく示した。これまで具体的な方針は明示されず様々な臆測を呼んでいただけに、ひとまず歓迎できる。ブレグジットは曖昧さのないきっぱりとした離脱を意味することになった。行く手には様々な危険が待ち受けるだろうが、到達すべき目的地は疑いの余地がないものだ。 英国のメイ首相は欧州連合(EU)からの離脱という難題に挑む(17日、英ロンドン)=AP
 メイ氏は2016年6月に実施された国民投票の結果から、移民制限を強化し、欧州司法裁判所の法の支配を終わらせることが必要だと判断した。その代償はEU単一市場からの撤退だ。これは二者択一で残念な選択だ。5億人を抱えるEU域内に共通の規則や基準をもたらし、自由貿易を可能にしている単一市場は、サッチャー元首相の残した最も偉大な政治的な功績の一つだった。ブレグジットの議論が熱を帯びる中、これはあまりにも簡単に忘れられてしまっている。
 メイ氏の前任者、キャメロン前首相は不運にもEUとの新たな条件交渉をしようとして失敗した。EUは条件の部分的なつまみ食いを受け付けなかったのだ。メイ氏は今、同じ現実に直面している。新たに英国のために有利な条件を求めるメイ氏と、既存の枠組みを断固として守ろうとするEUとの交渉には緊張感が漂う。欧州では愛国主義が台頭し、移民に対する圧力が非常に高まっている。米国ではトランプ次期大統領がEU崩壊に声援を送っているのように見える。
■米国やニュージーランドとFTAめざす
 メイ氏はまず貿易では、米国やニュージーランドをはじめとしてEU以外の国々と貿易協定を結びたい意向だ。これはEU共通の商業政策から離れる必要があり、関税同盟からの離脱を意味する。英国から欧州大陸への円滑なモノの輸出は国外の投資家がよりどころにしてきたもので、それを危機にさらすことになる。
 メイ氏は関税同盟への部分的加盟を交渉したい意向だが、それでは矛盾をきたす。自動車メーカーなどの業界がそれぞれ関税同盟型の協定を結ぶという同氏の構想は、少なくとも野心的ではある。しかし、EUとの自由貿易協定(FTA)を締結する方が可能性は高い。広範な協定の交渉には恐らく数年はかかりそうで、一部のEU加盟国は抵抗するだろう。その点、議会の最終承認を前提に、EUを離脱する予定の19年3月以降、新たな措置を段階的に導入する必要があるとメイ氏が認めたことは賢明だ。加盟国の離脱手続きを定めたEU基本条約(リスボン条約)50条を発動する前に、議会が発言することに反対した今回のメイ氏の判断も理にかなっている。
 英国がEUとFTAを締結できれば、世界の他の国々とより大きなFTAを結べるかもしれない。英国は世界6位の経済大国で、世界金融危機や16年夏の国民投票ショックの後でさえ、大半の先進国より経済状態は良好だった。メイ氏には持ち駒がある。
 経済以外では、EUとの新たな「戦略的関係」で議題にのっている分野には、比較的わかりやすいものがある。英国の軍事力や治安部隊の能力を考えれば、秘密情報を巡る活動でEUとの協力、連携は維持されるべきだ。メイ氏が科学や学術分野でEUとの連携を続けていくことを示したのも良いことだ。
 移民問題は格段に難しい。6年間の内相時代、メイ氏は自ら移民制限政策に携わってきた。17日の演説はそれとは対照的で、EUや域外から移民、とりわけ熟練労働者を受け入れる必要性については前向きな印象だった。EU27カ国に住む英国民の権利が保証されれば、英国に居住するEU市民の生活も確実に守ることも明らかにした。
 メイ氏は何らかの移民制限が政治的に必要だと考えている。とはいえ、数値的に制限するのは難しく、熟練労働者の不足につながる。いずれにせよ、もしIT(情報技術)輸出を後押しするうえで労働者の自由な移動を求めるインドのような国と貿易協定を結ぶとすれば、移民政策には一定の柔軟性が求められるだろう。
 メイ氏の演説からは、英国が外に開かれた国だという楽観的な見方が感じられた。イングランドやウェールズ、スコットランド、北アイルランドと構成している「何物にも代えがたい」現在の連合王国や、アイルランドとの友好関係を維持すると確約したことも正しかった。
 英国をまとめながらEUから離脱するには多大な労力と少しの運が必要になる。フィナンシャル・タイムズ紙はブレグジットに反対だった。これからすべての関係者は、数十年に一度の最も手ごわい政治的課題に立ち向かわなければならない。

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