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【FinancialTimes】 欧州議会、新議長就任で難局に存在感を

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 欧州連合(EU)が制度として危機に向かい滑り落ちていても、欧州議会はその転落を阻止するための対策を少しも講じてこなかった。EUは英国の離脱を控えて揺れているだけではない。一部の加盟国は明らかにEUに対して信頼を失っている。欧州懐疑派を自認する政党が増加する一方で、欧州議会はこれまで、欧州世論をもっと反映し、問題に迅速に対応する必要を少しも認識していなかった。 新たな欧州議会議長に選出されたイタリア出身のタヤーニ氏=ロイター
 今週それが変わる兆しが生じた。アントニオ・タヤーニ氏が新たな欧州議会議長に選出されたのだ。イタリア出身で元欧州委員会委員のタヤーニ氏は、物議を醸す人物だ。同氏の議長選出は、コンセンサス統治から対立型政治への移行を意味し、慣習にとらわれた組織に信頼をもたらすかもしれない。
 欧州議会はEUの中核機関の中で最も力が弱い。完全な立法権限を持つ機関ではない。それでも、各種の取り決めを次々と定めて徐々に権限を高めており、重要な役割を担うようになった。議会には現在、大半の法案に対する拒否権がある。これに貿易協定の法案が含まれるのは重要な点だ。英国がEU離脱後にEUと貿易協定を結ぶには、欧州議会の承認が必要となる。
 また、欧州議会は欧州の世論を代表し、EUの行政機関である欧州委員会の責任を問う上で重要な役割を担うべきだが、いずれも実績は不十分だ。欧州の有権者はEUの連邦的な権限について大いに疑念を示してきたが、欧州議会は欧州懐疑派の声に十分には耳を傾けてこなかった。
 タヤーニ氏の前任のマルティン・シュルツ氏を議長にした際の計略は、内輪のなれ合い政治の良い例だ。シュルツ氏は、同氏が当時率いていた中道左派の会派が2014年の議会選挙で2位になったことを受け、「残念賞」として議長職に再任された。勝利した中道右派の会派、欧州人民党(EPP)のジャンクロード・ユンケル氏は欧州委員会の委員長に任命された。
 それ以来、議会は中道左派と中道右派の会派から成る「大連立」で運営され、要職は両会派が分け合った。これが、少数派の欧州懐疑派を孤立させ、欧州委員会に対する十分な監査が行われない結果となった。議会を、自己の立場の強化にいそしむEU閥の最たるものとみなそうとする欧州忌避派は、議会攻撃のための十分な材料を手にしたのだ。
 タヤーニ氏の選出はこうした議会の「鋳型」をいくらか壊した。同氏の選出には、リベラルな中道派のEPPと右寄りの欧州懐疑派「欧州保守改革連盟(ECR)」との間での合意が必要だった。ECRには英国の保守党やポーランドの強硬右翼政党「法と正義」が含まれる。
 連立にECRが含まれたことに眉をひそめる者はいるだろう。タヤーニ氏自身もおそらくその一人だ。同氏の任期は、いわゆる「ディーゼルゲート」問題がのしかかる中でのスタートとなる。同氏がかつて欧州委員として自動車の排ガス汚染対策の規制を策定する責任を担っていた一方で、独フォルクスワーゲンは米国で酸化窒素排出量の公式な試験を逃れるという法律違反を犯していた。
 それならそれでいい。分裂した議会で議長を選ぶ際は常に、駆け引きがある程度必要であり、予期せぬ人物がリーダーになることもあるだろう。少なくともタヤーニ氏の選出では、合意形成の過程が、いやいやながらの同調ではなく、活発な議論につながる結果を生んだ。
 欧州議会での新たな連立勢力が欧州委員会の活動を精査し、欧州有権者の代弁者となる上でより良い仕事ができるかどうかはまだ分からない。連立勢力自体が中道の連邦主義の議員を多く含む幅広い連合だ。だが、大連立から独特のアイデンティティーを持つ指導部に移行したことで、見過ごされることの多かったEU官僚機構の中身がより建設的な役割を担うようになる希望が生まれた。

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