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【河北新報】 南スーダンPKO撤収/判断の徹底検証が必要だ

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 熟慮の末というよりも、ギリギリの苦渋の決断だったのではないか。
 政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PK0)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊を、5月末をめどに撤収させることを決めた。
 安倍晋三首相は「施設整備に一定の区切りを付けることができると判断した」と理由を説明しているものの、額面通りには受け止められないだろう。現地の厳しい治安情勢と無縁ではあるまい。
 陸自の部隊が活動する首都ジュバでは、昨年7月に政府軍と反政府勢力との間で大規模な武力衝突が発生して以降、急速に治安が悪化。国連の関係者が「全面的な民族紛争になる恐れがある」などと警告していた。
 安倍政権が、自衛隊員に犠牲者が出た場合のリスクを勘案したことは想像に難くない。これまで現地視察などを踏まえて「ジュバは比較的落ち着いている」と安全を強調してきたが、もはや強弁できなくなるまで危険が高まってきているのではないか。
 派遣の前提となる、紛争当事者間の停戦合意など「PKO参加5原則」との整合性が問われよう。政府は5原則が維持されているとの立場だが、「5原則は形骸化している」との指摘もあり、野党は国会で議論すべきだ。
 稲田朋美防衛相は、政府が昨年9月ごろから、撤収を含めた今後の在り方の検討を続けてきたことを明らかにしている。
 そうした状況の下で、なぜわざわざ昨年11月、「リスクが高まる」と批判があった「駆け付け警護」などの新任務を派遣部隊に付与したのか。「初めに付与ありき」と思われても仕方がないだろう。
 昨年7月の大規模な武力衝突について、当時の派遣部隊が残した日報の問題も影響を与えたはず。「廃棄」とされ後に見つかった日報には生々しい記載とともに、「戦闘」という言葉が使われていた。
 あくまで「武力衝突」と主張してきた政府は、「治安の悪化を隠蔽(いんぺい)している」と、国会で野党から追及された。
 稲田防衛相は「法律的な意味での『戦闘行為』はなかった」と釈明。さらには「憲法9条上の問題になる言葉を使うべきでないことから、武力衝突という言葉を使っている」とまで言い切った。
 まるで憲法に抵触するので、「戦闘行為」を「武力行使」に言い換えていると言わんばかりの答弁で、野党から辞任要求を突き付けられる事態にまで発展した。
 今回のPKO撤収の理屈付けもしかり。不都合な事実を覆い隠すために言葉を使い分けるような態度は、誠実とはいえまい。ましてや自衛隊員の命に直結する事案である。
 「出口」が見えたからといって、一件落着というわけにはいかない。今後のPKOのためにも、撤収に至った判断の徹底検証が求められる。

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