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【中日新聞】 オランダ下院選 社会の分断はさせまい

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 オランダ下院選は与党が第一党の座を守り、欧州連合(EU)との協調路線は維持されることになった。しかし、反EU・反移民を掲げる極右、自由党も議席を伸ばした事実は軽視できない。
 自由党は定数一五〇のうち二十議席を獲得。当初予想された倍増までにはならなかったが、現有より八議席増え、第二党になった。ウィルダース党首は「われわれも勝者」と強調した。
 予想ほど伸びなかったのは、投票直前に起きたトルコとの対立で、強い姿勢を示した現政権に支持が集まったためと、欧州メディアは指摘する。
 自由党は、反ユダヤ主義や復古主義などのネオナチ的主張ではなく、もっぱらイスラムや移民を標的にする。「自由を抑圧するイスラム的価値観とは相いれない」と訴え、年金受給年齢が引き上げられる中、「移民が福祉を食い物にしている」などとあおる。高福祉の国ならではの存在だ。
 イスラムを含めた多文化共存を目指すEUを敵視するのも、当然の流れだ。
 ただ、別の背景もある。
 オランダは小国だがチーズや花など農産物輸出額は世界第二位。EUの原加盟国でもあり欧州共同市場は生命線ともいえる存在だ。
 しかし、ナチス時代に自国を占領したドイツが、主導権を強めてEUの政治統合を進めていくことには、口には出されにくいが根強い不満がある。
 中央集権的な政治統合への反発が強まっていったのは、英国のEU離脱決定とも同じ構図だ。
 四〜五月に大統領選があるフランスでは極右の国民戦線、九月に連邦議会(下院)選があるドイツでは、右派「ドイツのための選択肢」が反EUや移民・難民受け入れ反対を訴え、勢いを増す。欧州のポピュリズム(大衆迎合主義)政党は、イスラム圏からの入国禁止政策に固執するトランプ米大統領とも共鳴し合っている。
 戦火を繰り返すまいとのEUの理念は尊い。しかし、共通政策にこだわるあまり、加盟国に一方的に規則や基準を強いる官僚的手法には問題がある。移民・難民問題への対処も含め、EUの指導者らはもっと各国民の意見に耳を傾け、不満解消に心を砕くべきだろう。
 イスラムや移民・難民をスケープゴートにするポピュリズムは許されるべきではないが、社会のゆがみや分断への警鐘として重く受け止めたい。  

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