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【河北新報】 天皇退位で特例法/脇に置かれた「象徴」の本質

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 天皇陛下の退位を巡る国会の議論が収束した。国民を代表する立法府の「総意」と言えば聞こえはいいが、曖昧さがにじむ「玉虫色」決着ではなかったか。与野党合意を優先するあまり、象徴天皇の意義といった本質論は脇に置かれてしまった感が強い。
 衆参両院の正副議長と与野党はきのう、陛下一代限りの特例法制定を柱とする国会見解を正式決定し、安倍晋三首相に内容を伝達した。
 見解では、皇室典範の付則に特例法と典範が「一体をなす」と明示。これで「皇位継承は皇室典範の定めるところ」とした憲法2条に違反するとの疑義が払拭(ふっしょく)されるとともに、退位は例外的措置となり、将来の天皇退位の際の先例になり得る、としている。
 ただ、例外なのに先例になるというのは苦しい理屈だ。今後の天皇の退位について特例法を否定しないということであり、その判断は時々の政権などに委ねられる。
 特例法にこだわる自民党、典範改正による制度恒久化を訴える民進党双方の主張を合体させた「寄せ木細工」で、皇統の安定という心棒が貫かれているとは思えない。
 83歳という天皇陛下のご年齢を考えれば、急がなければならないのは分かる。それにしても、国会の論議は法技術に矮小(わいしょう)化されてしまった。
 「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」−。当事者である天皇陛下が昨年8月、国民にあえて問い掛けたメッセージを真正面から受け止めた結論なのかどうか、甚だ疑問だ。
 天皇といえども生身の人間で、超高齢化の時代にあらがえない。「特例扱い」の退位ではなく、恒久的な制度を願っていただろう。自ら全身全霊で示してきた象徴天皇の役割についても、議論を深めてほしいとの思いがあったはずだ。そうすれば、終身在位との矛盾が見えてくるとの考えもあったのではないか。
 出発点からしてボタンの掛け違いがあった。政府は専門家でないメンバーでつくる有識者会議に論議を丸投げした。「偏った人選」との批判もあったヒアリングの結果、導いたのは政府の意向に沿う特例法を浮き出させた結論。国会の反発を招き、衆院議長らが乗り出す事態を招いた。
 そもそも憲法と密接に絡むテーマなのだから、早い段階で憲法学者から意見聴取し、それを土台にして議論を始めるべきだった。
 特例法の方向性が見えた以上、喫緊の課題は、先送りされた形の皇族減少への対応だ。皇位継承の資格を持つ皇族は皇太子さまを含め4人しかおらず、このままでは男系男子に限定される皇位継承が立ち行かなくなる懸念がある。
 そのためには結婚しても皇族に残れる女性宮家の検討を急ぐ必要がある。国会での議論を加速させ、期限を区切って結論を出すよう求めたい。

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