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【中国新聞】 「退位」国会見解 国民的議論の出発点に

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 天皇陛下の退位に向けて特例法を整備する方針が固まった。きのう、衆参両院の正副議長が各党派の全体会議を開き、国会見解を正式に決めた。
 与党と野党が妥協しながら互いに歩み寄り「立法府の総意」を取りまとめた点は一定に評価できるだろう。ただ、国会でのたたき台ができたにすぎない。退位を「国民の総意」とするためには、これを出発点として開かれた議論が求められる。
 当初、退位については、どの党派も法整備が必要との方向では一致していた。しかし法形式については、「一代限り」と位置づける与党と「恒久制度」を主張した民進党など野党との間で対立していた。
 この溝を埋めるため、見解では、皇室典範の付則に特例法と典範の関係が一体だとする規定を設けることを明記した。
 これにより、皇位継承は典範によると定めている憲法2条との整合性が取れる。同時に、将来の天皇退位につながる先例になる、とした。
 ただ、「退位が例外措置である」ことと、「将来の先例」は明らかに矛盾する内容だ。どうすれば恣意(しい)的な退位や強制的な退位を防げるのかという課題には、あいまいさが残っているといえるのではないか。
 見解では、特例法に陛下や皇太子さまの現況など退位に至る経緯や背景を詳細に書き込むよう提言している。特殊な事情を記すことで強制退位などを回避できるとした。
 しかし結局、将来の天皇が退位する際に同様な特例法で対応するかどうかは、その時の政権などの判断に委ねられてしまうに違いない。
 どういう基準で退位を認めるのか。要件を設ける難しさは理解できる。それでも、憲法で天皇の地位は「国民の総意に基づく」と定められていることを忘れてはなるまい。議論をさらに尽くすことが必要である。
 さらに天皇陛下の退位の方法論ばかりに関心が集まっていたようだ。象徴天皇の果たすべき役割はどうあるべきかという課題が事実上、置き去りにされたのは残念だ。
 陛下が昨年8月のビデオメッセージで国民に問い掛けられたのは象徴天皇の在り方だったはずだ。国民に広く支持されている戦地慰霊や被災地訪問などの公務は、憲法には規定がない。陛下が自ら模索した、象徴としての役割である。
 今後、どのような公務を担ってもらうのか。憲法と象徴天皇の在り方について改めて見つめ直す契機としなければならないのではないか。
 また、皇位継承を安定化させる方策を速やかに検討するよう促しているが、結論には至っていない点も懸念される。皇族の減少に対応する「女性宮家」の創設などにも言及しているが、将来の皇室像についての議論は退位よりもさらに難しいだろう。確実に前に進める責務が国会にはある。
 政府は国会見解を柱に特例法の法案作成を進め、5月にも国会に提出し、今国会での成立を図る考えでいる。
 しかし退位後の陛下や、皇太子さま即位後の秋篠宮さまの地位や名称、活動の在り方など論点はまだ多い。いずれも関心は高い。国民の声を幅広く聞いた上で慎重に進めるべきだ。

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