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【中日新聞】 辺野古に代わる選択肢 週のはじめに考える

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 政府は沖縄県名護市辺野古への新基地建設を再開しました。政府と沖縄が鋭く対立する新基地問題をめぐり、民間から新たな選択肢が提唱されています。
 日本のシンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」が先月、那覇市で開いたシンポジウム「今こそ辺野古に代わる選択を」は満員の盛況ぶり。三年間の検討を経て安全保障の専門家らがまとめた辺野古新基地の代替案が発表されました。
 代替案をみる前に辺野古新基地とは何か、振り返りましょう。 海兵実戦部隊を国外へ
 一九九五年の米兵による少女暴行事件をきっかけに、日米両政府は沖縄県にある米軍基地の整理・統合・縮小で合意。海兵隊が使う普天間飛行場の移設先は「沖縄本島の東海岸沖」、つまり辺野古とされ、撤去可能な海上施設に決まりました。
 工法は埋め立てに変わり、さらに二〇〇六年の米軍再編でキャンプ・シュワブの一部埋め立てに再変更され、現在に至っています。
 普天間飛行場で一本だった滑走路は二本となり、強襲揚陸艦が着ける岸壁や航空機への弾薬搭載エリアが新設されます。格段に機能強化されるので移設ではなく、新たな基地の提供ではないかと強い反対の声が上がっているのです。
 シンポジウムで元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博氏は「基地問題は施設を中心に考えてきた。視点を変えて海兵隊の運用に目を向けることで解決できるのではないか」と解説しました。
 要約すると、米軍再編の終了後、残る実戦部隊は第31海兵遠征隊(31MEU)の二千人のみ。彼らは長崎県配備の揚陸艦に乗ってアジア太平洋を巡回していて沖縄には半年程度しかいない。揚陸艦に乗り込むのはハワイでもオーストラリアでもよいので、31MEUの拠点を沖縄以外に移転する。 不要となる新基地
 平時において海兵隊は自衛隊と同様に救援活動をしている点に着目し、人道支援・災害救援に特化した日米協同の新部隊をつくり、その活動を支えるために日本政府は高速輸送船を提供するなどの関連経費を負担してはどうか−というのです。
 確かに31MEUが国外移転すれば、彼らを運ぶ垂直離着陸機「オスプレイ」が発着する辺野古新基地は不要となります。建設費の一部を米軍のために使い、貧困と格差をなくす活動として米軍が取り組む人道支援・災害救援に自衛隊がより積極的に参加することになれば、日本、沖縄、米国の三者にとって共通の利益になるというのです。米軍に縮小を求める一方、日本政府や沖縄県も協力するのが特徴です。
 「海兵隊撤退は中国に誤ったメッセージを与える」との説があります。とはいえ、大半の実戦部隊を撤退させる案は米政府が提案し、日本政府が同意しました。日米が中国を意識しないはずがありません。抑止力は低下しないと判断したか、日本政府が繰り返す抑止力という言葉は当初、実戦部隊を残そうとした米政府に合わせただけの理屈なのかもしれません。
 防衛省は一年後には自衛隊版海兵隊といわれる離島防衛を専門とする「水陸機動団」を長崎県で新規編成します。31MEUを上回る三千人規模となり、「日本は自衛隊が守る」という当たり前の姿となって、31MEU撤退の環境が整います。
 シンポジウム終了後、辺野古移転に反対する稲嶺進名護市長はNDメンバーらに握手を求めました。ただ、辺野古新基地をめぐる政府と沖縄の対立は激しさを増し、「安倍晋三首相、翁長雄志沖縄県知事とも感情的になっている」と話す元沖縄県議もいました。代替案を受け入れる余地は小さいようにもみえます。
 NDは沖縄、名古屋などの国内に続き、米国の首都ワシントンでもシンポジウムを開き、正式に代替案を発表します。日米両政府を動かすにはまず米政府から、というわけです。
 すでにNDの説明を受けた米国の研究者や議員から「現行案と異なる提案は初めてだ」と評価する声が上がり、米軍の準機関紙「星条旗」(ネット版)はND提案を大きく取り上げました。いまは「兆し」でも現実を動かすエネルギーになるかもしれないのです。 膨らむ変化の兆し
 沖縄県庁で近く新たな人事が発令されます。元金武町長の吉田勝広氏が基地問題を扱う新設の政策調整監に就くのです。
 金武町のキャンプ・ハンセンで行われてきた県道越え実弾砲撃訓練は危険極まりない訓練でしたが、その訓練をすべて本土へ移転させたのが吉田氏でした。
 革新系の吉田氏が保守系の翁長知事を支える。変化の兆しは膨らんでいます。  

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