Home > 社説 > ブロック紙 > 河北新報 > 【河北新報】 福島原発事故訴訟判決/避難者目線で過失を追及
E050-KAHOKU

【河北新報】 福島原発事故訴訟判決/避難者目線で過失を追及

1 点2 点3 点4 点5 点   (1 投票, 平均点: 1.00点)
Loading...

 平穏な生活を破壊された原告の心情を思いやれば、国と東京電力の過失責任は当然至極かもしれないが、司法の場ではっきりと認められた意義はやはり大きい。
 6年前の福島第1原発事故によって福島県から群馬県などに避難した137人が、国と東電の責任を追及した訴訟で、前橋地裁が計約3900万円の損害賠償を認める判決を言い渡した。
 この裁判で最大の争点になったのは、原子炉3基の同時メルトダウン(炉心溶融)という、かつてない原子力災害をもたらした原因。
 事故直後、「想定外」という言葉によって対策を取りようがない天災だったかのような言い訳がはびこったが、地裁は「予見は可能だった」と一蹴。「経済合理性を安全性に優先させた」と東電を強く批判した。「行使すべき権限を行使しなかった」と国に対しても違法性を認定した。
 「安全優先」は名ばかりであり、実は安全性がないがしろにされていたことは国会が設置した原発事故調査委員会も指摘していた。今回の判決も同様の判断を示した。
 かつての原発訴訟で裁判所は、国などの主張に深く立ち入らないで同調するケースが多かったが、安全の中身を具体的に評価しなければ司法の責務の放棄に等しい。
 安全性の実質を見極め、どこまで真剣に取り組んだのかを追究する姿勢は、今後も切実に求められている。
 予見可能性の判断に当たって前橋地裁が重視したのが、地震調査研究推進本部による2002年の長期評価。三陸沖から房総沖にかけて、マグニチュード(M)8クラスの津波を起こす地震が起きる確率は「今後30年以内で20%程度」とみなされた。
 つまり東日本大震災の震源域に相当するエリア。長期評価で予見が可能になり、被災を避ける対策を取る必要に迫られたのに「1年で実施可能な電源車高台配備などの暫定的な対策さえ取らなかった」と判決は指摘した。
 東電の怠慢ぶりは「特に非難に値する事実がある」とまで厳しく批判されたが、避難者も同じ思いだろう。
 原発事故の結果に対し、誰が責任を負うべきか。東電はもちろん、原子力を推進し続けた国も免れようがない。東電と国は補償や賠償を行ってきたものの、その一方では、結果をもたらした直接的な原因と法的な責任は不明確なままだったきらいがある。
 司法の場で不法行為と損害賠償の責任を問い、だれがその責任を負うべきか、いずれはっきりさせなければならないことだった。
 原発事故から6年がすぎてもなお、8万人近くが避難生活を送っている。生活再建にはまだまだ困難が伴う。事故を引き起こした原因も東電と国にあると明確に認める司法判断が定着すれば、被災者の大きな支えになるはずだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。