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【毎日新聞】 米国の利上げ 大統領が波乱の要因だ

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 米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)が再び利上げに踏み切った。2008年のリーマン・ショック後に採用したゼロ金利を平常時の金利水準に戻す動きの一環で、今回は3回目となる。
 失業率が低水準で推移し、物価上昇率も目標の2%に迫っている。もっと利上げを急ぐべきだったとの専門家の声もあるほどだ。国内外の経済への影響を注意深く点検しながら、金融政策の正常化を着実に進めていく必要がある。
 その過程で大きな波乱要因となりかねないのがトランプ大統領だ。
 成長率のかさ上げを目指すトランプ氏は、大型減税や大規模な公共投資を公約に掲げた。そのまま実行されると景気が過熱し、FRBは利上げのペースを速めざるを得なくなるだろう。
 景気刺激のアクセルを踏む大統領との間で緊張が高まる恐れがある。
 また、利上げが市場の予想を超えるペースで進めば、世界のマネーが高い利回りを求めて米市場に集中し、ドル高が一段と進行するかもしれない。それは、トランプ氏が力を入れようとしている輸出の促進に水を差すことにもなる。
 選挙戦中トランプ氏は、FRBやイエレン議長を批判した。大統領に就任した今、中央銀行への介入はもちろん、介入と受け取られるような発信も慎んでもらいたい。
 米国の金融政策を占う上で、もう一つの注目点は、トランプ大統領によるFRB人事だ。
 FRBでは、7人からなる理事会の空席が来月には三つとなる。さらに来年2月にはイエレン議長、6月にはフィッシャー副議長の任期満了を迎える。
 トランプ氏は、経済の安定的な成長を望むのであれば、自らの考えに近い人物で中央銀行の重要ポストを固めるべきではない。
 中銀で金利に対する政策決定者の考え方が一方向に偏れば、判断を大きく誤る危険が出てくる。
 今回の利上げ決定後、イエレン議長が記者会見で、「(利上げが遅れると)将来、急激な利上げが必要になり、景気後退につながる恐れがある」と述べたが、その通りだろう。
 すでに歴史的な超低金利が長期間続いているのだ。必要な利上げが度々先送りされ、証券や不動産市場でバブルが膨らんで崩壊すると、通常の景気後退では済まないかもしれない。米経済ばかりか世界経済も重大な危機に陥る危険がある。
 トランプ氏は、自らの経済政策運営のためにFRBを利用することが、「米国を再び偉大に」という目標と反対の結果を招きかねないことを、認識しておくべきだ。

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