Home > 社説 > ブロック紙 > 河北新報 > 【河北新報】 ポスドク問題/「出口」対策が弱すぎる
E050-KAHOKU

【河北新報】 ポスドク問題/「出口」対策が弱すぎる

1 点2 点3 点4 点5 点   (1 投票, 平均点: 1.00点)
Loading...

 せっかく育てた人材を役立てられないのは、その個人にとっても社会にとっても不幸であり、損失である。大学院、とりわけ博士課程を終えた「ポストドクター(ポスドク)」の就職難を考えると、いかに日本社会が人材を粗末にしているかが分かる。
 常勤の研究職が見つからないまま、3年や5年といった期限付きの研究職を渡り歩く。身分が不安定な上、大学院までに投じた学資と比べれば、収入は全く割に合わない。
 有期の在任期間に成果を上げなければ、研究職を続けられない可能性もあり、精神的には常に追い詰められている。腰を据えた研究に取り組みにくい状況は学術研究のレベル低下をも招く。
 博士課程修了者の就職難であるポスドク問題の根底には、国が進めた「大学院重点化計画」による定員の大幅な拡大がある。1993年度の大学院博士課程修了者は約7400人。それが今や1万5000人を超えるまでに増えた。急拡大した「入り口」の一方で、「出口」の充実策は不十分だった。
 国は博士号取得者の雇用対策として「ポストドクター等1万人支援計画」を展開し、大学や研究機関の有期雇用の研究者を増やすなどした。
 しかし、肝心の教授や准教授などのポストは、財政悪化や少子化に伴う大学の予算削減が進む中で抑制され、安定した研究職に就けるのは極めて少ないのが実態だ。
 ポスドクの3分の1は35歳以上という数字もある。不十分な出口対策は、不安定な研究者の高齢化問題をも生んでいる。国や大学、研究機関はもちろん、民間企業も一体となって対策に取り組んでいかなければならない。
 肝心なのは博士号取得者の就職ルートを多様化させることだ。高度な専門知識や技術を身に付けた博士号取得者を大学という組織の枠を超え、社会全体で受け入れるようにしていく必要がある。
 企業が採用する博士号取得者は米国などと比べ極端に少ないという。企業側が年齢の問題から博士課程修了者を敬遠する傾向が関係している。
 加えて、知識はあっても社会的常識に課題がある博士課程修了者もいるという指摘もある。大学側は、社会が求める人材像を踏まえた教育にも取り組まなければならない。
 「将来は大学の研究者になるのが当然」と思い込んでいる博士課程修了者の意識改革も欠かせない。
 技術立国として研究の裾野を広げることの必要性は理解しつつも、果たして大学院の定員設定そのものが適切かどうかも検証が必要だろう。
 ポスドク問題は単にキャンパス内の問題にとどまらない。博士を1人育てるためには税金が1億円かかるという試算もある。それだけの投資をし育てた有為な人材を活用することは社会全体で取り組むべき大きなテーマである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。