Home > 社説 > 全国紙 > 読売新聞 > 【読売新聞】 福島避難者判決 争いの長期化が憂慮される
E010-YOMIURI

【読売新聞】 福島避難者判決 争いの長期化が憂慮される

1 点2 点3 点4 点5 点 (未評価)  
Loading...

 東京電力福島第一原発事故について、国と東電の過失責任を認めた初の司法判断である。
 福島県から群馬県に避難した住民ら137人が慰謝料などを求めた裁判で、前橋地裁は国と東電に計約3800万円の賠償を命じた。
 未曽有の事故の重大性を改めて認識させる判決だと言えよう。
 事故の原因となった巨大津波は予見し得たのか。最大の争点について、判決は、予見可能性を明確に認め、事前の対策で事故は防げた、との見方を示した。
 東電は、2002年に国が公表した地震活動の長期評価を踏まえて、15メートル超の津波到来の可能性を推計した。判決が、事故を予見できたと認定した理由の一つだ。
 予見可能性については、専門家の間でも見解が分かれている。
 東電経営陣らに対する刑事告訴・告発を巡り、検察がいったん不起訴と判断した際には、地震学者への聴取結果などを基に、巨大津波の予見可能性を否定した。
 前橋地裁は、過失要件を緩やかに捉えて結論を導いた。予見可能性の認定で、民事と刑事のハードルの高さの差が如実に表れた。
 原子力災害の特徴について、判決は「侵害される法益が極めて重要で、被害者が広範に及ぶ」と指摘した。国に対しては、「規制権限の適切な行使による発生防止が期待されていた」にもかかわらず、行使を怠ったと批判した。
 原発事故の特殊性を重視した判断だと言える。
 憂慮されるのは、争いの長期化である。避難者らに対しては、国の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に基づいて、東電から賠償金が支払われている。損害の賠償を円滑に進めるための目安として機能してきた。
 東電との交渉や裁判外紛争解決手続き(ADR)を経て、既に賠償を受けている住民は多い。
 前橋地裁は、原告の62人について、賠償金の上積みを命じた。避難指示区域に住んでいた住民以外に、区域外から自主避難した人たちも含まれている。
 全国で提起された同種の集団訴訟は、前橋地裁を含めて28件に上る。今回の判決を機に、ADRなどで和解したケースでも、訴訟が提起される可能性は否定できまい。司法判断が新たな争いにつながる事態は避けたい。
 重大事故が起きた以上、国と東電には、被害者の生活を支える責任があるのは言うまでもない。慰謝料とは別に、就業など個々の事情に応じた対応が求められる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。