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【陸奥新報】 福島原発訴訟判決「国の姿勢と責任問い直す契機」

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 東京電力福島第1原発事故に伴い福島県から群馬県へ避難した住民らが、国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁(原道子裁判長)は、津波到来を予見し事故を防ぐことはできた―として、東電と国に計約3855万円の支払いを命じた。東電については経済的合理性を安全性に優先させるなど「特に非難に値する事実がある」、国に対しては安全規制権限を「行使しなかったことは著しく合理性を欠き、違法」とそれぞれ断じた。
 判決では、政府の地震調査研究推進本部が、三陸沖北部から房総沖の日本海溝でマグニチュード8クラスの地震が30年以内に20%程度の確率で発生する―と推定した「長期評価」(2002年7月策定)を「地震学者の見解を最大公約数的にまとめたもので合理的」と重視。「知見として不十分」と予見可能性を否定した東電と国の主張を退けた。東電は長期評価公表から数カ月後には想定津波の計算が可能だったとした。国については、長期評価から5年を経ても自発的な対応が期待できない東電に、原子力災害の発生を回避するための命令を含む規制権限を行使しなかった姿勢を問題視した。
 国の賠償責任も東電と同等と結論付けるなど、国の責任を正面から認めた画期的な判決とされる。規制権限の適切な行使で「原子力災害の未然防止が強く期待されている」国に、常に安全側に立った対策が必要だと指摘した内容だ。避難者のみならず、原発事故を経た一般市民の目線に近い判断だったとの印象を持つ。
 事故の発生から6年がたった。新規制基準の下で再稼働を進める国に、事故の教訓を踏まえてより慎重な対応を促すことにもなろう。
 東電については予見可能性を飛び越えて「実際に予見していた」と表現した。08年5月には長期評価を基に15・7メートルの津波の到来を試算していたことを指す。このことも「特に非難に値する事実」と捉えていい。
 事故に関する同種の集団訴訟は全国で約30件。前橋地裁判決は、司法の判断が示された最初だった。いずれの訴訟も、津波の予見可能性が主要な争点と聞く。ただ、裁判官により長期評価の捉え方は分かれるだろうとの指摘もある。訴訟により判断が割れると、避難住民間に「同じ訴訟なのに」という新たなわだかまりが生じかねない。原子力事業が国策である以上、原発事故に関して分かりにくいとされる国の責任の所在を、関連法制を含めて整理すべきではないか。
 事故については、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣の3人が津波対策を怠っていたなどとして、16年3月に業務上過失致死傷罪で強制起訴された。争点はやはり津波の予見可能性。初公判の日程は未定だが、前橋地裁判決はこの刑事裁判にも影響を与えるのだろうか。

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