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【岩手日報】 心の復興格差 一人一人の痛みと共に

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 眼下に住宅建設が進む中心街、かなたに海。大槌町城山の高台に先月開所した納骨堂には、身元不明の遺骨70柱が安置されている。
 津波は膨大な命を奪い、身元不明の多くの遺骨を残した。さらに、県内の行方不明者は2月末現在で1122人。地道に県警の捜索が続く。
 この納骨堂が、心の中で、大切な人と再会を果たす場になってほしい。そんな思いを込めて、手を合わせた。
 震災6年、七回忌。犠牲者の遺族や行方不明者の家族は、節目をどう迎えたのか。
 「これからは、少しずつでも自分の生活を整えたい」
 「どんなに時間がたっても気持ちの整理はつかない」
 一人一人の声に、一つとして同じ痛み、悲しみはないと実感させられる。生活再建の遅れで心の痛みが倍加する人もいれば、生活再建を果たしたからこそ「ようやく悲しむことができる」人もいる。
 目に見える復興から、目に見えない心の復興へ。7年目に際しては、台風10号被災地も含め、一人一人の回復の歩みに寄り添う心のケアの充実に力を入れていきたい。
 本紙が毎年実施している遺族・家族アンケートでは、七回忌に際し、家族の犠牲・行方不明を「受け入れられた」は約5割。受け入れられていない人は約1割で、「どちらとも言えない」を含め4人に1人が、心の整理をつけられていないことが分かった。
 さらに、行方不明者のいる人が、いない人より「受け入れられていない」傾向も浮かび上がった。
 行方不明者家族に特有の悲嘆については、米国のポーリン・ボス博士が「あいまいな喪失」として理論化し、日本でも震災後に注目されるようになった。大切な人は戻ってくるのか、こないのか。「さよならのない別れ」に、気持ちの整理がつけられない。
 膨大な遺族・家族の悲嘆からの回復を支えるため、震災後、国内の専門家が災害グリーフサポート(JDGS)プロジェクトを立ち上げ、専門職の研修などに取り組んでいる。また、被災地の仏教など宗教者らも、犠牲者や不明者の魂と残された人の心に寄り添い続けている。
 最新の理論と、被災各地に固有の風土、宗教的伝統が融合していくことで、一人一人の痛み、悲しみと共にある地域づくりを進めてほしい。
 災害からの時間経過は、心の復興格差をあらわにする。励ますつもりの「いつまで悲しんでいるのか」「もう諦めろ」といった声掛けが、逆に傷つけることもある。
 悲しみからの回復の歩みは人それぞれ。遺族や家族が胸中を語り始めたら、どうか傾聴してほしい。あなたにだからこそ、話せることがある。
 

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