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【中日新聞】 利用者負担上げ 「介護の社会化」は遠く

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 一定所得以上の利用者負担引き上げを盛り込んだ介護保険法の改正案が衆院を通過し、今国会で成立する見通しになった。矢継ぎ早の給付カットに「保険あってサービスなし」の事態が懸念される。
 食卓の上には「もう限界です」との走り書きがあった。東京都八王子市で先月、認知症の妻(81)を殺害し、無理心中を図ったとして、夫(84)が殺人の疑いで逮捕された。睡眠薬を飲んで自殺を図った夫は「介護に疲れ、精神的に追い込まれた」と供述している。介護サービスは利用していたという。
 こうした悲劇は後を絶たない。厚生労働省によると、介護を受けていた六十五歳以上の人が親族による殺人や心中などで亡くなったケースは自治体が把握しているだけで二〇一四年度は二十五件だ。高齢者虐待に関する調査では、家族などによる虐待と判断した件数は一五年度、一万五千九百件超に上っている。虐待の発生要因として最も多いのが「介護疲れ・介護ストレス」で、25%を占めた。
 膨張する介護費用を抑制する目的で、政府は介護サービスのカットを次々と打ち出している。介護殺人・心中は今後、さらに増える恐れがある。
 改正案は、単身者の場合、年収三百四十万円以上の人の利用者負担を二割から三割に引き上げることが柱だ。対象は約十二万人。利用者負担は原則一割だが、一五年八月から単身者で同二百八十万円以上の人は二割に引き上げられたばかりだ。このほか、軽度の要支援者向けの訪問・通所介護を市町村事業に移す見直しも、今月初めに完全実施された直後である。
 こうした負担増による影響の検証もないまま、さらなる給付カットを実行しようとするのは、乱暴ではないか。しかも、将来的に二割、三割負担の対象が拡大されていくことも予想される。
 改正案の審議中、厚労省は一部の利用者負担が二割になった一五年八月に、特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設を退所した二割負担者は全国で約千六百人いたことを明らかにした。また、「負担二割」になった人の特養退所割合は3%で「一割負担継続」の人の倍近くだった。長期的に見れば、退所せざるをえないという人はさらに増えるだろう。介護が必要な高齢者とその家族にしわ寄せがいくことは必至だ。
 介護を社会全体で担う「介護の社会化」という制度創設時の理念から遠ざかっている。  

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