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【中国新聞】 英国6月総選挙 政権基盤固められるか

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 英国のメイ首相が6月8日に総選挙を実施する意向を表明し、下院の賛成を得て正式に決まった。これまで再三、総選挙は2020年の任期満了まで実施しない方針を示してきただけに、国内に動揺や衝撃が走るのも不思議ではあるまい。
 欧州連合(EU)との離脱交渉を控えて政権基盤を強化するのが狙いのようだ。今なら最大野党の労働党に勝ち、議席を上積みできるとの計算があるのだろう。ただスコットランドなどEU残留支持が根強い地域もある。思惑通りに進むかは、決して予断を許さない。
 メイ氏はもともとEU残留を支持していた。しかし昨年6月の国民投票で離脱の結論が出ると、それを尊重してきた。民主主義を大事に育ててきた国の政治家として当然といえよう。
 首相になった当初は、人やモノ、サービス、資本の自由な移動を原則とする欧州単一市場に参加しながら、国民に抵抗のある移民の流入は制限する考えだった。しかし「いいとこ取り」を許せば追随する国が出かねないと危惧するEUに拒否され、欧州単一市場から完全に抜ける方針に追い込まれた。メイ氏自身も積極的に選んだわけではない完全離脱を支持する人は、そう多くはないだろう。
 実際、与党の保守党の一部や野党には完全離脱に否定的・懐疑的な声も根強い。EUへの輸出や英国への投資が減り、経済が立ちゆかなくなってしまうのでは、との不安があるからだ。
 下院はいま、650議席のうち保守党が単独過半数の330を占め、労働党とは100以上も差がある。しかし完全離脱方針への賛同が広がらないままでは、離脱に向けたEUとの最終合意がまとまっても、土壇場で下院に否決される恐れがある。
 そうした事態を避け、自身の掲げる完全離脱への求心力を高めたいとメイ氏は考えたのではないか。国民投票を受け前首相が辞任したため、選挙で国民の信任を得ずに首相になったとの批判もある。総選挙に勝って政権の正当性を得たいのだろう。
 離脱交渉は総選挙後から本格化する。原則2年かけて進めていくが、相当難航しそうだ。その前に、まずは政権基盤を安定させたかったに違いない。
 英国内の世論調査では、保守党は、労働党に支持率で大きく水をあけているという。今こそ勝機と判断したようだ。
 労働党も、国民投票で民意が示された離脱自体は受け入れている。二大政党間でEU離脱の賛否が争点になることはなさそうだ。しかし国民の間では今も賛否が拮抗(きっこう)している。もし保守党が敗北すれば、離脱方針そのものが揺らぐ恐れも出てくる。それだけにメイ氏は、現状や完全離脱のデメリットも含めて国民に丁寧に説明すべきである。
 国民投票でEU残留が6割を超えたスコットランドの動きも不安材料だろう。地元の政党は、離脱反対と併せて英国からのスコットランド独立に向け、14年に続く住民投票の実施を目指している。今回の総選挙で得票が増えれば、独立派が再び勢いづき、英国内の地域分断をさらに深めかねない。
 メイ氏の思惑はともかく、英国民にとっては、国の将来やEUとの望ましい関係が問われる総選挙となる。じっくり考えるきっかけにすべきである。

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