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【茨城新聞】 天皇退位最終報告 安定継承の論点どこに

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天皇陛下の退位を巡り、政府の有識者会議が最終報告をまとめた。衆参両院の正副議長が先に各党派から意見を聞き取り、与野党の合意を経て安倍晋三首相に提出した国会見解を踏まえ、特例法による退位後の陛下の呼称を「上皇」とするのがふさわしいとした。皇后さまは「上皇后」とした上、敬称はそれぞれ「陛下」を用いるという。また新天皇の即位後に皇位継承順1位になる秋篠宮さまの待遇については「皇太子家」並みにするのが適当とするなど退位実現に必要な制度設計はほぼ整った。これを受けて政府は近く特例法案の骨子と要綱を国会に提示。5月中旬に法案を閣議決定し、提出する方向で調整を進めている。
しかし、その過程で皇族の減少が影を落とす皇位の安定継承という重要な論点が脇に追いやられつつある。国会見解は政府が「女性宮家の創設等」を速やかに検討すべきだとした。今回の提言も皇族減少を課題として挙げているが、女性宮家など具体策には触れていない。最近明らかになった法案の付帯決議案も同じ書き方になっている。
さらに骨子案には、将来の天皇退位の先例となり得ることへの言及もない。ぎりぎりの調整で国会見解に取り入れられた野党の主張が徐々に削られているのが見て取れる。政府、与党は「国会の総意」を軽んじすぎてはいないか。いま一度、見解に立ち戻るべきだ。
憲法は天皇の地位について「国民の総意」に基づくと定める。退位を巡る法整備で与野党対決が鮮明になれば、皇位は不安定なものになる。早々と陛下一代限りの特例法制定の方針を固めた与党と、皇室典範改正による退位の恒久制度化を主張する民進党との溝をどう埋めるか-が合意形成の最大の焦点になった。また民進党が検討課題に掲げた女性宮家創設についても自民党を支える保守層に根強い反対があった。与党の意向を背景に有識者会議は最初から女性宮家を議論の対象から外し、3カ月余りの議論を経て1月下旬、特例法制定が望ましいとする論点整理を公表した。ただ特例法による退位であっても、将来の先例になるとの考えを示した。
これを足場に正副議長による各党派の意見集約が進められ、国会見解には「天皇の地位について定める特例法は、この法律と一体をなす」との典範付則の規定案が明記された。さらに女性宮家創設についても「安定的な皇位継承を確保するため政府が速やかに検討を加えるべきだとの共通認識に至った」とあった。
典範付則に特例法の根拠規定を置くことで「先例になり得る」とする一方で「退位は例外的措置」とするなど与野党に配慮した折衷案の色合いが強いが、一定の合意に至った点は評価できた。
ところが最終報告にも付帯決議案にも、女性宮家は出てこない。そればかりか、典範付則の根拠規定は骨子案で「天皇陛下の退位に関する特例法は、この法律と一体を成す」となっている。「陛下」の二文字を加えたことで、あくまで陛下一代限りの例外的措置と強調したい意図がにじむ。
国会見解と骨子案などとの相違点はほかにもあり、ここへきて政府、与党が野党の主張を押し返そうと躍起になっているのがうかがえる。法案提出に向けた今後の与野党協議で、見解を軸にした練り直しを求めたい。

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