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【北海道新聞】 続くプラス成長 国民の実感とは異なる

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 内閣府がきのう発表した今年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・5%増、年率換算で2・2%増だった。
 プラス成長は5四半期連続で、2005年から翌年にかけての6四半期連続以来、約11年ぶりという息の長さとなった。
 だが、額面通りに「景気回復」を実感する国民は少ないだろう。
 輸出は大きく伸びたものの、個人消費や設備投資などの内需は相変わらず力強さを欠いている。
 好調な企業業績が賃金に十分反映されず、社会保険料の負担増も重荷となって、消費者の節約志向はむしろ強まっている。
 こうした閉塞(へいそく)感の根底にあるのは将来不安だ。安倍政権はそこを直視し、社会保障制度の立て直しなどに真剣に取り組むべきだ。
 今回の成長のけん引役は、昨年後半から伸びている輸出で、前期比2・1%増だった。
 景気拡大が続く米国経済に加え、中国経済も公共事業主導による回復が著しい。世界的なIT需要の拡大で、半導体製造装置などの輸出が大きく伸びた。
 昨年10~12月期は横ばいだった個人消費も0・4%増と持ち直した。もっともこれは、昨夏の台風による生鮮食品の高騰が収まったことが主因とみられる。設備投資も0・2%増にとどまった。
 問題は、大手企業の業績が底堅いにもかかわらず、内需の伸びがごくわずかだという点にある。
 企業は、もうけを賃上げや設備投資に十分回さず、内部留保は空前の水準に積み上がっている。
 財政難で社会保障制度の維持が危ぶまれ、給料も十分に上がらないとなれば、国民が消費を控え、貯蓄に励むのは当然だ。
 見逃せないのが、社会保障の行き詰まりは、企業が賃金を抑制する口実にもなっていることだ。
 年金や医療などの保険料は、働く人と企業が折半している。企業側は社会保障の負担増を理由に、内部留保をひたすらためこむ行動を正当化しているのである。
 高齢化が進む中で、社会保障制度の立て直しを枠外に置いたアベノミクスの限界がここにある。
 経済成長で税収を増やし、財政再建につなげるというアベノミクスの楽観的なシナリオを、もはや国民の大半は信じていない。
 安倍政権は、見せかけの経済成長を過信することがあってはならない。国民の将来不安にしっかりと向き合い、これを取り除く政策を具体化することが急務である。

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