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【岩手日報】 「共謀罪」大詰め 採決を急ぐ意図を疑う

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 共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」の委員会審議で、目立ったのは金田勝年法相だ。野党から追及を受ける度に質問者に背を向け、顔の下半分を覆うマスク姿の法務官僚にすがる担当大臣の姿は、いかにも頼りない。
 珍回答も多々ある。森林法違反を対象犯罪に含めた理由は「組織的犯罪集団が資金を得るため、キノコなどの窃盗を計画することが想定されるから」。共謀罪の成立に必要な「準備行為」の判断を問われ「持ち物がビールや弁当なら花見、地図や双眼鏡やメモ帳などなら犯罪の下見」。
 法案提出前の2月の衆院予算委で、対象犯罪を当初の676から277に絞った件に関し、国際組織犯罪防止条約の規定から「減らせない」としてきた政府見解との整合性を問われ「突然の質問で、当時の経緯が分からない」。
 答弁に窮した揚げ句、報道機関に「国会提出後に議論すべきだ」とする文書を配布して与党内からも批判が出て、謝罪して撤回。「私の頭脳というんでしょうか、ちょっと対応できなくて−」。
 法務委で法案審議が始まると、与党は冒頭で法務省刑事局長の出席を強要。法相への質問を引き取る場面が多くあり、野党から「法相隠し」と批判を浴びた。
 与党の採決強行の動きを受け、民進と共産、自由、社民の野党4党は衆院に法相不信任案を提出。反対多数での否決は数の力だが、だからといって与党側が「理不尽」と非難するほど野党の出方は理不尽だろうか。法相答弁の心もとなさは、法案に世論の懸念が消えない主因の一つだ。
 法案は「組織的犯罪集団」の構成員らが2人以上で犯罪を計画し、少なくとも1人が実行の「準備行為」をすれば計画に合意した全員が処罰される。捜査対象の定義はあいまいで、運用次第で監視社会を招くとの不安は根強い。
 適用対象とする「組織的犯罪集団」について、政府はテロ組織や暴力団などと説明。「一般人は捜査対象にならない」とする一方で「目的が一変」した場合は対象になるとの見解も示す。いきなり「捜査対象」にはならなくても、場合によって「監視対象」になり得るということだ。
 「天下の悪法」と評される戦前の治安維持法も、1925(大正14)年の制定当時は「一般人は無関係」と説明されていた。時の為政者のさじ加減一つで、国家権力が個人の思想、信条に踏み込む危険性は排除し切れていない。
 テロ対策も国際条約加盟も現行法制の運用で対応可能−とする日弁連や野党の主張にも、政府の反証は不十分。法案の緊要性が伝らないままに採決を急ぐ姿勢には、その意図を疑わざるを得ない。
 

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