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【琉球新報】 共謀罪法案可決強行 成立させてはならない 解散して国民に信を問え

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 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案が衆院法務委員会で強行採決され、与党や日本維新の会の賛成多数で可決された。
 捜査機関が団体や市民生活のあらゆる分野を常時監視し、取り締まりの対象とする監視社会を招く恐れがある。
 安保関連法によって憲法9条をねじ曲げ、特定秘密保護法によって国民から情報を隠し、共謀罪法案によって国民を監視する。安倍政権は、日本をこれまでとは違う社会に変質させようとしている。議会制民主主義が機能しない中で、憲法違反の悪法を成立させてはならない。この際、解散して国民に信を問うべきである。
 監視社会はごめん
 沖縄県民は戦中と米国施政下で監視社会を経験している。そんな社会の再来はごめんだ。
 元県議で沖縄社会大衆党の委員長を務めた瑞慶覧長方さんの父長真さん(当時48歳)は1944年5月、糸満の海で、溺死体で見つかった。投身自殺だった。
 44年の初めごろから「長真はそういう(社会主義の)本を持っているらしい」とのうわさが流れてきた。ある日、2人の特別高等警察官(特高)が突然自宅に現れた。本棚をひっくり返し、裏の小屋にあった種まき用の大豆が入った大きなかめに手を突っ込んで、社会主義に関する本を徹底的に探し回った。抜き打ちで数回家宅捜索が行われたが「本」は見つからなかった。
 特高による尋問で長真さんは日ごとに憔悴(しょうすい)していった。当時11歳の長方さんはなすすべがなかった。ある晩、父はふらりと家を出たまま帰らぬ人となった。治安維持法によって家族の日常が奪われてしまった。
 米国統治下の56年、琉球大学の学生らが「ヤンキー・ゴー・ホーム」とシュプレヒコールを上げながらデモ行進したとして、米国の圧力によって退学処分になった。大学は当時、米軍によって監視されていた。表現、思想信条の自由はなかった。
 安倍晋三首相は1月の国会答弁で、処罰対象は「そもそも犯罪を犯すことを目的とする集団」としていたが、2月には「そもそもの目的が正常でも、一変した段階で一般人であるわけがない」と説明を変えた。線引きが曖昧だ。
 対象は際限なく広がり、労働組合など正当な目的の団体であっても、捜査機関が「組織的犯罪集団」として認定すれば処罰対象になる可能性がある。かつて石破茂氏が秘密保護法案への反対運動をテロになぞらえたことがある。辺野古新基地建設に反対する市民運動も対象になる恐れがある。
 現代の治安維持法だ
 治安維持法の下で言論や思想が弾圧された反省を踏まえ、戦後日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。
 しかし共謀罪法案は、実行行為がなくても犯罪を行う合意が成立するだけで処罰する。捜査機関が恣意(しい)的に運用する恐れがあり、日本の刑法体系に反する。犯罪実行前に自首した場合は刑を減免する規定があり、密告を奨励する社会になりかねない。
 対象犯罪を676から277に絞ったとしても、拡大解釈される可能性は否定できない。治安維持法も拡大解釈され、全く歯止めが利かなくなった。
 安倍政権は安保法によって、自衛隊による海外任務を拡大させ、憲法違反の集団的自衛権行使を認めた。秘密保護法によって国に不都合な情報を隠し国民の知る権利を侵している。今度は共謀罪法案によって国民を監視する。おとり捜査や潜入捜査、室内盗聴、GPS捜査など捜査手法の拡大を合法化する可能性もある。
 これだけの重要法案でありながら30時間の審議だけで議論が深まるはずがない。強行採決した法務委の責任は重い。主権者の国民を代表する国権の「最高機関」という自覚が足りない。委員会審議のやり直しを強く求める。

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