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【秋田魁新報】 「共謀罪」採決強行 国民の懸念置き去りだ

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 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を審議してきた衆院法務委員会で、与党側が改正案の採決を強行し、賛成多数で可決した。改正案は23日の衆院本会議で可決され、参院に送られる見込みだ。
 野党の民進、共産両党は「生煮え状態の改正案を採決するのは絶対認められない」と抗議し、怒号とやじが飛び交う騒然とした中での採決だった。国民の不安が払拭(ふっしょく)されていない段階で、与党が数の力で押し切ったことに強い憤りを覚える。
 安倍政権下ではこれまでも、国民に反対の声が多い重要法案を与党の数の力で押し通してきた。安全保障関連法案やカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案などで採決を強行、可決している。
 今回の改正案は犯罪の計画段階で処罰することを可能としており、内心の自由が脅かされかねないとの懸念は根強い。世論調査でも改正案に対する賛否は拮抗(きっこう)し、国論が二分されていることを安倍政権は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。反対意見にも耳を傾け、可能な限り審議を尽くそうという姿勢がなければ民主主義の基盤が崩れかねない。
 共謀罪法案は過去に3度提案されたが、適用対象を単なる「団体」と規定するなど線引きが曖昧なため乱用の恐れが指摘され、いずれも廃案になった経緯がある。今国会でも一般人がテロ等準備罪の適用対象になるかどうかが最大の論点となり、昨日の法務委ではこれまでの審議と同様にこの点について政府と野党が激しく応酬した。
 金田勝年法相は、適用対象を「組織的犯罪集団」に限定した上、処罰するには犯罪の合意に加えて下見といった「準備行為」が必要になるなど要件を厳格化したとし、「一般市民が対象になることはあり得ない」と強調。これに対し、民進党などは「一般人は捜査対象にならないことが条文に明記されていない」と指摘、捜査機関の恣意(しい)的な運用によって一般人が対象になる恐れがあると追及した。
 議論が平行線をたどる中、与党側は法務委の審議時間が通算30時間を超え、採決の環境が整ったとして採決を強行した。野党の反対を数の力で封じ込め、首相が出席しての締めくくり質疑も行われないまま重要法案を採決するのは異例であり、あまりにも強引ではないか。
 これまでの審議で不安が解消されたとは到底言えない。「組織的犯罪集団」の適用基準が不明確な上、1人が「準備行為」をしただけで計画に合意した他の全員が処罰される点について「過去の共謀罪と本質的に変わらない」という指摘もあり、疑問点は多く残ったままだ。
 改正案は憲法で保障された国民の権利と自由に関わる。テロ対策の名の下にそれが侵害されるようなことがあってはならず、慎重かつ十分に時間をかけた審議が不可欠である。

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