Home > 社説 > 地方紙 > 中国地方 > 山陰中央新報(島根県) > 【山陰中央新報】 仏総選挙マクロン新党大勝/次は公約を実行する時だ
E230-SANIN

【山陰中央新報】 仏総選挙マクロン新党大勝/次は公約を実行する時だ

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 フランス国民議会総選挙で、マクロン大統領が1カ月前に立ち上げた新党「共和国前進」が約6割の議席を獲得し、大勝した。定数577のうち75%が非現職という大変動。4月の大統領選第1回投票まで、半世紀以上続いていた左右二大政党を中心とする「既成政治」はわずか2カ月で雲散霧消した。
 マクロン大統領は就任から約1カ月で、米ロを含む各国首脳と会談、39歳の若さながら巧みな弁舌で安定感のある指導者との評価を得た。組閣で左右両派さらには政界以外から人材を登用する手腕も鮮やかだった。総選挙で盤石の権力基盤を得て、次は政策の実行で公約である欧州連合(EU)統合強化とフランスの変革を図る時だ。
 今回総選挙では、大統領選の決選投票で争った極右、国民戦線(FN)の党勢衰退が明らかになった。当初は50議席以上の躍進も予測されたが、FN内部の分裂もあり8議席にとどまった。それは、有権者が再び親EUの側に戻ってきたことを意味する。
 フランスは国連安全保障理常任理事国だが、一国で大国の米中ロに立ち向かうことはできない。欧州が結束するときだけEU中核国として世界に影響力を広げることができる。米国が抜ける温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の維持や、自国中心の保護貿易主義にどう対抗するか。英国の離脱で一時崩壊の危機すらささやかれたEUを再構築できるかどうかが鍵となる。
 試金石になりそうなのが、いまだに続くギリシャの債務問題だ。EUと国際通貨基金(IMF)は先頃、財政難のギリシャへの追加融資で合意した。欧州債務危機の始まりから8年、欧州経済が浮揚できない要因の一つは、ギリシャの債務返済期限が訪れるたびに広がるデフォルト(債務不履行)不安だ。
 IMF側はギリシャの債務軽減による抜本的な解決を望むが、EU側は最大債権国ドイツの強い反対で応じていない。そのドイツを説得できるのは、おそらくマクロン氏が率いるフランスだけだろう。
 ドイツでは9月に連邦議会選を控え、メルケル首相の与党キリスト教民主同盟の優位が伝えられる。選挙後、マクロン氏とメルケル氏が、EUを主導する独仏の結束を新次元に高めれば、EU再生への嚆矢(こうし)となる。
 国内では、グローバル化の影響による分断や格差、疎外状況を克服することが大きな課題だ。それはイスラム過激思想に染まる自国生まれのテロリスト対策にも重なる。
 大勝したとはいえ、総選挙の投票率は約43%と史上最低レベルだった。マクロン政権への支持は、パリなど大都市圏に偏っている。政治に失望し、投票に参加しなかった「声なき声」に耳を傾けることが必要だろう。
 マクロン氏は大統領選の勝利集会で、対抗馬の極右ルペン候補に投票した有権者に「あなたがたは怒り、狼狽(ろうばい)、信念を表した。私はそれを尊重する」と呼び掛けた。これは支持者のブーイングを招いたが「(任期5年の間に)極端な主張に投票する理由をなくすため、あらゆる手段を取る」と続けると拍手に変わった。マクロン大統領の言葉には力がある。それを実現できるか、大統領の挑戦が本格化する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。