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【山陰中央新報】 豊洲移転/築地との両立は可能か

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 東京都の小池百合子知事が築地市場を、豊洲市場へ移転させる方針を発表した。昨年8月の就任後、「立ち止まって考える」と移転をストップしてから移転の決断まで時間がかかったことは否めない。
 小池知事は、豊洲の地下水の安全性が確認されれば移転を判断するとみられていた。だが、今年1月に環境基準を大幅に上回る汚染が見つかったことなどで、移転を早期に表明するシナリオが狂ったとも分析できる。
 もともと土壌汚染があった東京ガス工場跡地に、市場を移転すること自体にリスクがあった。このため都側が無害化を約束し、移転同意を取り付けた経緯がある。対策をしたが無害化はできなかったとして、小池知事が謝罪したのは、都行政のトップとして当然の責任だと言える。
 ただ、汚染によって「豊洲が危ない」とする風評が広がったのは、環境相を経験した知事としてはいただけない。地下水を市場で使うわけではなく、汚染が残っていることと豊洲市場の安全性には、あまり関係がないことは分かっていたはずだ。
 消費者の安心を得るため、科学者や行政も含め幅広い対話を進めて市場の安全性を確認するなど風評被害を抑える努力をもっとすべきだった。
 小池知事が明らかにした方針で、首をかしげざるを得ないのは、築地市場跡地の再開発だ。これまでの売却方針を撤回し、競りなど市場機能を持たせた「食のテーマパーク」として5年後をめどに整備するという。
 豊洲市場は約6千億円かけて整備され、追加の汚染対策も施す。さらに年間100億円近い赤字が見込まれる。この穴埋め策を探すという知事の問題意識は分かる。
 だが豊洲と築地の二つの市場が両立するかは、慎重な分析が必要だ。現在の築地でも、産地直送が広まり魚の取扱量は減ってきている。外国人観光客が市場を見学することは観光の一つの目玉だろうが、衛生面を考えれば限定的であるべきだ。
 知事は築地ブランドを強調するが、築地という場所がブランドではない。築地に出荷するため行う漁師らの魚の処理に始まり輸送、築地での卸売りと仲卸の業者による魚の丁寧な取り扱い、そして東京での食事までのトータルがブランドを形成する。築地に施設を造れば観光客が集まるわけではない。行政主導の再開発がうまくいった例は乏しいということも、肝に銘じるべきだ。
 小池知事が示した「築地は守る、豊洲を生かす」というのは、23日に告示される都議選に向けたキャッチフレーズのように映る。再開発後の築地に市場機能を持たせるのは、移転反対派に対する政治的な配慮と言えるだろう。
 小池知事は自らが創設した地域政党「都民ファーストの会」代表として都議選を戦う。名古屋や大阪の例を見ると、首長が地域政党を率いることによって議会内の対立が激化し、首長が進めたい政策に対する反対が強まる傾向がある。政策の中身より、党利党略が優先されるからだ。
 都議選後、議会でもこの移転方針が焦点となる。東京の未来を描くような骨太の議論によって、実現可能性が高い築地再開発になることを期待したい。

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