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【北海道新聞】 四島渡航拒否 日本の法的立場脅かす

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 北方領土での日ロ共同経済活動の官民調査団に長谷川俊輔根室市長が参加できなかった問題で、ロシア側が長谷川氏を「入国制限の対象者」だとして、参加を拒否していたことが分かった。
 ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に編入した際、日本の制裁への報復として、ロシアも特定の日本人の「入国」を禁止した。そこに長谷川氏が含まれていたとみられる。
 だが今回の調査団は、両国が主権の問題を棚上げして続いてきたビザなし渡航の枠組みに基づく。「入国」禁止を理由とする拒否はその趣旨を踏みにじるものだ。
 共同経済活動も、両国の「法的立場を害さない」との前提で安倍晋三首相とプーチン大統領が合意したはずだが、準備段階からその基盤が揺らいでしまった。
 最前線である根室の市長が現地に入れないようでは満足に準備もできまい。日本政府は実現を急ぐのではなく、自らの法的立場を守りつつ交渉にあたるべきだ。
 調査団には道内経済関係者ら69人が参加し、先月27日から今月1日に現地入りした。長谷川氏は出発の前日になって日本政府から参加できないとの連絡を受けた。
 日ロ両政府は詳細を公表していないが、複数の外交筋がウクライナ問題を巡る報復制裁が理由だと認めた。日本側はビザなし渡航の趣旨に理解を求めたが、ロシア側が受け入れなかったという。
 ビザなし渡航は、旅券やビザを前提とせず、いわば主権を度外視して入域できること自体に意味がある。今回のロシアの主張を認めるならば、制度自体の否定にもつながりかねない。
 政府はまず、ビザなし渡航を巡る合意の意味を、外交ルートであらためて確認するべきだ。
 日本側が今回、調査の実現を優先させた背景に、首相と大統領との合意を早急に形にしたいという焦りはなかっただろうか。
 最初の「成果」と見込んでいた空路による北方墓参は、悪天候で秋に延期された。ウラジオストクでの次回首脳会談を9月に控え、それに代わる得点を急ぐ事情を見透かされたとの指摘もある。
 首相は共同経済活動を「平和条約締結への一歩」と位置づけたはずだ。帰属に関わる問題をないがしろにして、共同経済活動の実現を急ぐのでは本末転倒である。
 元島民からも「北方四島でのロシアの主権を容認したも同然」と厳しい声が出ている。日本政府は重く受け止めねばなるまい。

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