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【読売新聞】 東大論文不正 研究者として認識が甘過ぎる

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 研究不正は、科学への信頼を大きく損ねる。嘆かわしい事態である。
 東京大は、分子細胞生物学研究所の渡辺嘉典教授と、部下だった元助教の研究論文5本に捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正があったと認定した。
 科学雑誌「ネイチャー」などに2008~15年に掲載された論文だ。研究には、国などから計15億円近い助成金が支給された。
 実際は行っていない実験のデータを捏造してグラフを作成したり、画像の濃淡を過度に際立たせる加工を施したりしていた。
 論文全体の信ぴょう性が揺らぎかねない行為である。
 昨年秋に匿名の告発があり、東大の調査委員会が調べてきた。
 渡辺氏は、捏造について、研究員が示したデータのチェックが行き届かなかった、などと調査委に釈明している。
 調査委は画像処理を「改ざん」と断じた。渡辺氏は「不適切な画像操作」だったと認めたものの、「論文の結論を覆す意図はなかった」と強調している。
 正確な実験結果を論文で報告することが、研究者の鉄則である。渡辺氏らは、それを蔑(ないがし)ろにしたと言わざるを得ない。
 理学部時代から一貫して東大に在籍する渡辺氏は、細胞分裂に関わる染色体の著名な研究者だ。
 実験の成果を強調するために、渡辺氏が画像加工を積極的に指示した。研究室には、それに反論できない雰囲気があった。調査委は、不正の背景をこう指摘する。
 権威を有する教授が長年、研究室を差配することの負の側面が表れたのではないか。
 分生研では14年にも大量の論文の不正が認定された。東大と分生研は、実験資料を一定期間保存し、倫理講習への参加を義務付ける再発防止策を講じた。今回の不正の一部は、その後に起こった。
 分生研全体に、論文不正に対する認識の甘さがある、と批判されても仕方あるまい。意識改革を急がねばならない。
 研究者間の激しい競争や大発見をした際に与えられる名誉、研究資金の獲得など、論文不正には様々な動機があるだろう。14年に問題化したSTAP細胞を巡る騒動は、記憶に新しい。
 生命科学分野では、実験の方法や条件がわずかに違うだけでも結果が変わりやすい。パソコンの性能が向上し、画像を都合良く加工できるようになったことも、不正が絶えない一因となっている。
 大学や学会には、チェック体制の不断の見直しが求められる。

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