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【山陽新聞】 若年世代のがん 患者に子ども持つ希望を

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 若い患者が抗がん剤などの影響で子どもを持てなくなるケースをどう減らすか。日本癌(がん)治療学会はそのための治療方法を初の指針にまとめた。
 最近はがんの治療前に卵子を凍結保存して出産の可能性を残す方法などが注目されている。ただ、治療によって子どもを持てなくなる恐れがあることや、対策があること自体が患者に十分知らされていない例もあるとされる。
 学会は「がん治療が最優先」としており、誰もが子どもを持てるというわけではないが、患者が将来を考えて自分で決定できるよう、医師は選択肢があることを伝えてほしい。将来、子どもを持てるかもしれないという希望は、つらい治療を乗り越える支えにもなろう。
 指針はがんの種類別に、子どもを持つ可能性を残す治療方法を示した。乳がんは摘出した場合、速やかに抗がん剤治療をするのが一般的だが、開始を最大12週間遅らせて卵子の凍結保存を検討できるとした。精巣がんは治療前の精子の凍結保存を推奨し、子宮頸(けい)がんは部位などによって子宮を全て切除せず残せる場合があることを盛り込んだ。
 がん治療に当たる医師には患者が希望する場合、早期に生殖医療の専門医を紹介し、連携して治療するよう求めている。患者の希望に沿う最適の治療のため、医師の専門を超えた連携は欠かせない。
 経済的負担も課題になる。卵子や受精卵の凍結保存は、初期費用に少なくとも20万~40万円かかるという。
 がん治療の前に卵子を凍結保存したケースは2015年、256件だったが、経済的支援があれば保存を望む女性患者は年間約2600人に上る。そうした推計も厚生労働省研究班がまとめている。
 一般的な不妊治療は04年に公的助成が始まり、年39万件が実施されるまでに増えた。がん患者が妊娠の可能性を残すための凍結保存に必要な費用は、不妊治療に対する助成の100分の1以下と厚労省研究班は試算している。国は公的助成を検討すべきだ。
 10代半ばから30代にかけての若年世代のがんはこれまで、中年以降と小児のはざまで診療や相談支援の体制が遅れがちだった。国は近く閣議決定する「第3期がん対策推進基本計画案」にようやく、この世代への対策を掲げた。治療に伴う生殖機能の影響など治療前に正確な情報を提供し、必要に応じて専門施設を紹介する体制を目指す。
 岡山県も18年度からの次期がん対策推進計画に、医療や相談支援体制の整備を盛り込む。県内の患者も少なくない。国立がん研究センターが先日発表したがん医療の拠点病院などの集計では、15年に診断されたこの世代のがん患者は500人を超えている。
 医療などの進歩で、がんを患っても治る可能性は高まっているだけに、就学や就職、出産など治療後の生活も考えて支援することが大切だ。

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