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【日経新聞】 人の力をいかす日本へ(4)

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 日本の活力を高めるうえで欠かせないのは、海外人材が活躍できる場を広げていくことだ。欧米では反移民ムードが広がるが、国にとって必要な外国人を獲得しようとする競争は衰えていない。日本の将来を見据えて、外国人材をどのようなルールで受け入れるのか正面から議論し、包括的な政策を打ち出すときに来ている。
 
  現実と向き合う必要
 日本でも働く外国人の数は年々増えている。2016年10月現在では108万人と、5年間で58%増加。日本の就業者の2%近い水準に達している。
 伸びが目立つのは2倍以上に増えた留学生のアルバイト。これと国際貢献を建前に受け入れている技能実習生で全体の4割以上を占める。人手不足が深刻化するなかで、日本で働くことを目的とせずに来ている人たちがその穴を埋めている姿が浮かび上がる。
 日本が競争力や魅力を高め、経済や社会の基盤を維持していくには、外国人材の力が重要になる。だが、政府はこれまで「移民政策はとらない」という建前のもとで、その場しのぎの受け入れ策を重ねてきた。現実と向き合わない対応を続ければ、むしろ社会の安定性を損なう恐れもある。
 求められるのは、外国人材の就労から社会への定着、支援のあり方まで含めた全体的な戦略だ。
 大きな柱は3つある。一つは高度人材や留学生の就労を促す政策をさらに拡充することだ。
 学歴や年収などを基準に研究者や技術者を優遇するポイント制の導入は、人材獲得に効果を発揮し始めている。これに加え、起業をめざす若者などが日本で活躍できる仕組みを強化すべきだ。
 留学生は学んだことと仕事の内容が合わないと就労ビザが下りないが、基準があいまいで資格の取得に苦労する例も多い。基準の透明性を高め日本での就職のカベを低くしていくことが肝要だ。
 2つ目は、高度人材とはいえないものの、介護、農業、物流など日本の産業を支える人材を正面から受け入れる仕組みづくりだ。技能実習制度を様々な業種に広げる形で対応してきたが、もはや限界に近い。国際協力という名目とのギャップが広がり、実習生が不当な待遇を受ける例も目立つ。
 政府は外国人技能実習機構を設け実習生の権利保護に努める構え。ただ一時的な出稼ぎ受け入れという側面が強い現行制度では、労働の質も高まらず働く人たちの社会的な位置づけも低いままだ。
 日本人だけで対応できない分野で、質の高い人材を受け入れる正式な枠組みを確立すべきだ。
 企業や有識者らで構成する外国人雇用協議会は、一定の技能水準を持った人を選定する「外国人就労適性試験」を実施し、これに合格した人に在留資格を与える制度の導入を提言している。試験では日本語や社会的なマナー、業種ごとに必要な知識などについて評価する。会員企業などと内容を協議しながら実際に試験をつくり、実施する準備を進めている。
 
  企業の努力も欠かせず
 相手国も責任を持つ2国間協定の活用や、雇用への影響を考慮した毎年の受け入れ人数の上限設定といった工夫によって、社会や経済に望ましい形で受け入れる制度をつくることは可能なはずだ。
 3つ目は受け入れた外国人の支援だ。有能で社会に溶け込める人材は日本に残ってもらうのが望ましい。そのためにどんな能力や資格が必要かわかりやすく示せば、外国人材の技能向上意欲を高めることにもなる。日本語習得の後押しや教育、医療など生活面でも外国人を支えていく必要がある。
 外国人材の活躍促進には企業の役割や努力も重要になる。海外人材獲得に前向きな企業は増えているが、日本企業への就職に二の足を踏んだり、就職してもすぐやめたりする外国人が少なくない。
 日本国際化推進協会が15年に実施した留学生らへのアンケート調査では、「日本に住むのは魅力的」と答えた人が83%に達したが、「日本で働くのは魅力的」との回答は22%にとどまった。処遇の仕組みを明確にするなど、働く場としての魅力を高めるべきだ。
 外国人材はすでに日本を下支えする存在になりつつある。その流れは一段と強まるだろう。どんな人に来てもらい、働いてくれる人をどう支えるか。官民ともに真剣に考えねばならない。(おわり)

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