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【河北新報】 臍帯血 無届け移植/民間業者に厳格なルールを

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 「血液のもと」になる幹細胞の宝庫「臍帯血(さいたいけつ)」が高額で売買され、国に無届けのまま患者に移植されていた。再生医療の信頼性を揺るがしかねない事件だ。徹底究明し再発防止に生かしてほしい。
 愛媛など4府県警の合同捜査本部が、東京都のクリニック院長や、茨城県の臍帯血販売会社社長ら計6人を再生医療安全性確保法違反の容疑で逮捕した。
 民間の臍帯血バンクが2009年に経営破綻し、一般の人たちから預かっていた大量の検体が外部に流出したのが発端。この臍帯血を譲り受けた会社社長と医師らが共謀して昨年から今年にかけ、計7人の患者に無届けで移植した疑いが持たれている。
 14年11月施行の再生医療安全性確保法は、再生医療の安定的な実施に向け、医療機関に治療計画の届け出や事前審査などを義務付けた。
 捜査関係者によると容疑者らが法施行後に売買した検体は約100人分。大半が無届けの移植に使われたとみられる。患者の費用は1回300万〜400万円と高額で、利益は数億円とされる。医療行為とは到底言えまい。
 クリニック側は、有効性が不確かな、がん治療や美容の効能をうたっていた。患者の約3割は中国などの外国人とされ、健康願望につけ込んで国内外の富裕層を食い物にしていたのではないか。
 臍帯血は、新生児と母親をつなぐへその緒と胎盤に含まれる血液。赤血球や白血球、血小板などを作る造血幹細胞が豊富に含まれており、白血病の治療に使われている。
 日本赤十字社などが運営する公的バンクは産婦から譲り受けた臍帯血を保管し、適合する第三者に提供する。移植症例は約1万5千件に上る。
 民間バンクは、子どもが病気になった時に備え、家族が長期にわたり預ける私的な取引だ。国の規制の範囲外で実績も乏しい。管理体制を危ぶむ声は以前からあった。
 厚生労働省は今回の事件を受け、他の民間バンクの実態調査に乗り出している。不届きな業者らによる転売ルートは他にもあるのではないか。
 「臍帯血移植」全体の信頼回復のためにも、民間業者の適正な運営に向けた法整備を急ぐべきだ。
 昨年、京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)が、臍帯血を使って人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作った。品質が良く、外部機関にも提供を始めたが、作製の際に試薬を取り違え、提供を自主的に中止したことがあった。
 少しでも劣化の懸念がある細胞が人体に入れば、健康被害を起こしかねないからだ。
 再生医療への社会の期待は大きい。半面、発展途上の技術でもある。それだけ携わる人たちには、慎重さや高い倫理観が求められる。
 必要な医療が患者に適切に行き渡るように、国は規制や指導の責任を果たすべきだ。

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