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【山陽新聞】 臍帯血の移植 信頼回復へルール整備を

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 母親と胎児を結ぶへその緒や胎盤に含まれる臍帯血(さいたいけつ)を国に無届けで移植したとして、東京のクリニック院長や茨城県の臍帯血販売業者ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕された。2014年に施行された同法違反容疑での立件は初めてである。
 同法は効果や安全性が不透明な再生医療に歯止めをかけるため、医療機関に対して実施計画の提出や事前審査を義務付けるものだ。臍帯血を使う医療も、急性白血病や悪性リンパ腫など27疾病を除き、厚生労働省が審議会の意見を聞いて承認の可否を決める。
 立件された患者7人への移植はがん治療や美容目的で、届け出が必要なケースであり、使われた臍帯血は09年に破綻した茨城県の民間バンクから流出した。費用は1回当たり300万~400万円に上る。肝心の有効性や安全性の検討も不十分で「治療効果がなく、患者が危険にさらされる可能性がある」と日本再生医療学会は批判している。
 患者の期待を裏切る悪質な行為と言わざるを得ない。近年期待が高まる再生医療の信頼を揺るがすものだ。臍帯血販売業者は10年4月以降、三百数十人分を販売しており、複数の医療施設が購入して、移植を受けた患者は約30都道府県に及ぶという。実態の解明を急がねばならない。
 捜査のきっかけは、臍帯血移植後に亡くなった進行がん患者の遺族からの相談だった。同法施行前で立件に至らなかったものの、治療の選択肢が乏しくなった弱みに付け込んだと批判されても仕方があるまい。
 事件を通じて浮かび上がったのは、背景となった民間の臍帯血バンクが野放しになっている現状である。
 臍帯血は血液のもとになる幹細胞を多く含み、白血病などの治療に広く使われている。産科医療機関で妊婦らの同意を得て採取し、臍帯血バンクが冷凍保存する。
 第三者への提供を目的にした全国6カ所の公的バンクと、新生児本人や家族の治療用に有料で預かる民間バンクがある。
 14年施行の移植造血幹細胞提供推進法は公的バンクの事業を許可制とし、品質の確保を図ったが、民間バンクは対象外とされた。臍帯血を使う治療はまれな上、品質管理が不透明なため、医師から民間バンクの安全性や有用性を懸念する声も出ていた。
 国は12年時点で少なくとも4組織あること以外、詳しい実態を把握できていない。今回の問題を受け、やっと調査を始めたが、対応の遅れは否めない。
 公的バンクを介した移植は過去20年で約1万5千例に上り、多くの命を救ってきた。事件により臍帯血移植のイメージが悪化し、こうした活動に影響が出ることが懸念される。信頼を回復するため、国は民間バンクの運営について早急にルールを整え、事件の再発防止を図るべきだ。

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