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【佐賀新聞】 里親養育

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 虐待や貧困など、さまざまな事情で親が育てられない子どもを家庭で養育する里親制度。厚生労働省が、有識者会議の報告を踏まえて新たな目標を導入することになった。
 就学前の子どもを新たに乳児院や児童養護施設に入れるのを原則としてやめ、里親の元で暮らす割合(委託率)を、就学前で7年以内に75%以上へ引き上げ、就学後は10年以内に50%以上を目指すという。高い目標設定だ。
 現在の里親委託率は、国全体で17・5%にとどまる。政府は2029年度までに3割超にする目標を掲げている。これを大幅に引き上げ、達成時期も早めることになる。昨年改正された児童福祉法は、里親や養父母による家庭的な養育を基本とすることを明確にした。今回、新たに数値目標を設定したのは、それに沿ったもので、目指す方向としては正しいといえる。
 里親は、親が育てられない0~18歳の子どもを、自治体から委託を受けて育てる。研修を経て認定されると登録となり、養育中は手当などの支給がある。
 親が育てられず、保護が必要な子どもの数は全国で約4万5千人、佐賀県内は約300人。大半が乳児院や児童養護施設で暮らす。子どもの成長には、家庭で暮らす時間や経験がとても大きな役割を担っている。施設でなく、家庭で親身になって愛情を注いでくれる里親の存在意義もそこにある。
 ただ、今回の新たな目標には、課題も多い。佐賀県はハードルの高さに戸惑いを隠せないでいる。国の方針に沿って、2015年3月に県家庭的養護推進計画を策定。社会的養護の現状を15年かけ、施設本体、グループホーム、里親などで、それぞれ3割強にしていく目標を設定している。
 今年4月現在の佐賀県の里親委託率は19・6%まで高められてはいる。しかし、新しい数値目標を成し遂げるには、県の計画目標の前倒し以上のものが求められる。
 肝心なのは、数値自体が目的化されてはならないことである。子どもと里親との相性を無視して、無理に里親に預けても、子どもが施設に逆戻りになる恐れもある。そうなれば子どもたちが一番悲しい目に遭う。あくまで子ども本位に考えないといけない。
 佐賀県内の登録里親は94世帯(今年4月)で、里子の養育数は38世帯で45人(昨年3月)。いずれにしろ、里親の登録者を増やす必要がある。受け皿づくりを含め、きめ細かく、地道な啓発をしていかねばならない。今はまだ里子を迎えても、地域が特別視する風潮があるといい、気にして里親になることをためらう人もいる。
 虐待などで心身の発達に問題を抱える子どもも多い。大人への不信感がある子どもの養育には高いスキルが要る。このため里親の募集から研修、養育に入った後の支援などの強化は欠かせない。中心的な役割を担う児童相談所の人員拡充は喫緊の課題だ。
 他県では、NPOなどによる支援の取り組みが功を奏し、高い委託率を実現している自治体もある。そうした先進事例も参考にしてほしい。
 子どもたちの健全な成長には、安心できる居場所が必要だ。社会全体で新しい絆を育む里親家庭を増やしていきたい。(横尾章)

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