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【岩手日報】 防災の日 「多様な視点」で訓練を

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 外国人の質問に高校生が身ぶり手ぶりで答える。日本語で出される災害情報を、多言語ボランティアや高校生が英語、中国語、そして外国人にも理解しやすい「やさしい日本語」に翻訳する。
 先週末に行われた県総合防災訓練の一コマ。2019年ラグビーワールドカップや外国人観光客の増加を見据え、外国人の避難訓練が初めて行われた。
 訓練そのものは日本語に不慣れな外国人への対応が目的だが、「災害時に、より深刻な影響を受ける人々といかに共生するか」という重要なテーマをはらんでいた。
 日本に暮らす外国人は災害時は要援護者(災害弱者)になってしまう。「言葉の壁」で情報から孤立するからだ。命が助かっても、次には「文化や習慣の壁」がある。東日本大震災では避難所で日本人と衝突したり、差別を受けた人もいる。
 ふだんのコミュニティーにいれば、仲間がいる。理解してくれる人もいる。しかし、非常時にはその仕組みが一気に壊れてしまう。
 決して外国人だけの問題ではない。障害者、高齢者ら弱い立場の人々が受ける影響はより大きい。セーフティーネットから漏れた不安は耐え難いに違いない。
 それぞれのハンディ、個性に応じた支援や配慮が欠かせない。そんな試みが、昨秋の一関地区の消防演習で行われた。平泉町と町婦人消防協力隊、一関西消防署平泉分署の炊き出し訓練だ。
 メニューは、イスラム教の戒律に従ったハラル食のカレー、アレルギーを引き起こす恐れのある材料を使わない野菜スープ。宗教や体質によって食が制限される人々に配慮した。
 大震災時は乾パンやインスタント食品などに頼らざるを得なかった。しかし、それを食べられない人もいる。歯の弱いお年寄りが食べにくい食事も少なくなかった。
 非常食一つとっても、いろいろなニーズを持つ人々に配慮して進化している。「多様な視点」を生かすことがキーワードだ。
 女性や高齢者、障害者、子ども、外国人。避難訓練の企画や運営に参加してもらってはどうだろう。今までは気づかなかった「弱点」が見えてくるはずだ。
 そうした訓練を通して、弱者と言われた人たちが地域社会にとって欠かせない存在になってくる。
 東日本大震災では支援活動に活躍する女性や外国人も多い。高齢者も地域の文化や歴史の継承者として復興に貢献している。
 多様な人がいる現実の社会の強さと弱さを知り生かしたい。きょう1日は防災の日。
 

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