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【中国新聞】 成人年齢の引き下げ 少年法改正の議論詰めよ

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 政府は、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を、来月の臨時国会に提出する構えだ。少年法の適用年齢についても現行の20歳未満から18歳未満にするかどうか、法制審議会の少年法・刑事法部会での議論が進んでいる。
 一足先に選挙権が18歳以上に引き下げられ、若者に大人としての自覚を促したい意図は分かる。だが年齢の規定がある他の法律全てについて、安易に引き下げを進めるようなことがあってはならない。
 少年法を含め、年齢の規定がある法律は目的や意義もそれぞれ異なり、規制や保護する対象もさまざまである。全てに機械的に当てはめられまい。個々の法律で引き下げた場合に、生じる問題を細かく洗い出しながら、一つ一つ丁寧に議論を詰めていく必要がある。
 成人年齢の引き下げは憲法改正手続きを定めた国民投票法が2007年に成立し、10年に施行されたのが契機だ。投票年齢を18歳以上とし、付則で選挙年齢の引き下げなどを要請した。
 16年6月施行の改正公選法は、選挙年齢を18歳以上とし、その付則では「少年法と民法について必要な法制上の措置を講じる」とも明記した。
 ただ少年法の改正には異論もある。同法が、教育によって非行を防止し立ち直りを促すことを趣旨にした法律だからだ。18、19歳の少年が適用外となれば、更生の機会が失われ、再犯が増える恐れがあると専門家や実務経験者が指摘している。
 少年法では、事件を起こした少年は家庭裁判所に送られる。そこで心理学や教育学などの専門家である家裁調査官が家庭環境や成育歴、交友関係などを細かく調査し、行動観察を行う。家裁はその結果を基に保護観察や少年院送致といった処分を決め、更生に向けた教育や指導を続ける。そうすることで再犯を防止し、非行や犯罪の減少につながっており、国際的にも評価されているという。
 問題は18、19歳が適用外となれば、少年犯罪に多い窃盗などは起訴猶予になり、そのまま社会に戻ることになる点だ。選挙権や民法上の引き下げの議論とは、切り離して慎重に議論を進めるべきではないか。
 政府は競馬など公営ギャンブルについて、民法で成人年齢が引き下げられた後も、20歳未満の禁止を維持するため「未成年者」を「20歳未満」とする改正法案を民法改正案と同時に提出する方針だ。飲酒・喫煙についても、警察庁が、飲酒・喫煙の解禁年齢は現行のまま維持する方向で検討している。
 発育への影響や、依存症や非行など、社会的な問題行動につながるリスクを考えれば、妥当な判断といえよう。
 ただ懸念はほかにもある。18、19歳が消費者被害に遭う危険性も高くなるという。ローンやクレジットなどの契約も親の同意なく可能になるため、成人直後の若年層を狙って契約を迫る悪質業者もいる。消費者教育の充実も課題となる。
 成人年齢の引き下げによって想定される問題にどう対応するのか。若者の自立を促すなど、メリットだけが強調されてはならない。結論ありきでなく、まず個別の課題に議論を尽くし、自立を支えるための施策の全体像を示すべきではないか。

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