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【京都新聞】 社会的養護  丁寧に進めたい「脱施設」

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 児童虐待や経済的事情により親元では暮らせない子どもの養育について、厚生労働省は施設ではなく家庭で育まれる機会を増やすための新たな数値目標の導入を決めた。
 同省の有識者会議がまとめた報告書を受け、里親委託率や特別養子縁組の成立件数を大幅に引き上げる意欲的な内容だ。ただ、ハードルは高く、数字が独り歩きして子ども一人一人へのケアがおろそかになるようでは元も子もない。子どもの利益を第一に丁寧な取り組みを求めたい。
 子どもの健全な発育には、乳幼児期に特定の養育者と家庭的な環境で安定した関係を築くことが必要とされるが、日本では「施設から家庭へ」の転換は欧米に比べて遅れている。
 厚労省によれば、親に代わって育てる「社会的養護」を必要とする子どもは約4万6千人。大半は児童養護施設や乳児院で暮らし、児童5~6人の養育を行うファミリーホームを含む里親家庭で暮らす子どもの割合は2割にも満たない。3~7割を占める欧米主要国との開きは大きい。
 昨年成立した改正児童福祉法は、そうした施設中心の児童養護の在り方を改め、できる限り家庭的な環境で養育するという原則を掲げた。これに沿って厚労省は、就学前の子どもの施設への新規入所を原則禁止にし、里親委託率を高めるとする。
 具体的には、就学前の子どもは75%以上、就学後の子どもは50%以上が里親の元で暮らせるようにするという。現行の目標33%と比べても、かなり高い設定だ。
 全国の児童相談所(児相)が対応した児童虐待の件数は2016年度に12万件を超え、過去最多を更新した。里親や特別養子縁組は、そうした子どもたちの大切なセーフティーネット(安全網)であり、拡大に向けて思い切った数値目標を掲げることは悪いことではない。
 問題は、児相など児童養護に関わる現場がどこまで対応できるかだ。
 里親委託を進めるには、約1万ある登録世帯を増やすだけでなく、質の確保も欠かせない。
 児相は面接や研修を通して里親にふさわしいか審査し、登録後も子どもとのマッチング、委託後のフォローまで慎重に進めなければならない。関係をうまく築けるかどうかは子どもの将来に関わる問題だ。数字優先で性急に委託率を高め、制度が劣化しては本末転倒だろう。
 戸籍上、養父母の「実子」として扱える特別養子縁組については、おおむね5年間で倍増し、年間千件の成立をめざす。このために原則6歳未満としている対象年齢の引き上げなどを進めるという。
 これも、子どもと養親をつなぐ丁寧なプロセスが何より求められよう。実親との関係が断たれる子どもと養父母とが新たな関係を作る過程に数値目標を持ち込むことには疑問の声もある。
 「脱施設」に向けては、人員や財源の確保はもちろん、児相と児童養護施設や民間事業者との連携など課題が多い。社会全体で子どもを守る意識を育てていくきっかけにしたい。

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