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【岩手日報】 食料自給率 かつての危機感どこへ

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 日本の食料自給率が、また下がった。2016年度のカロリー基準の自給率は38%で前年度から1ポイント落ち、過去2番目に低い。
 冷夏による米の大凶作で、37%にとどまった1993年度に次ぐ。24年前の冷害は、人々の記憶に今も生々しく刻まれる。その時と同じ水準とは驚くしかない。
 農林水産省の分析では、今回も気象の影響が大きい。昨年は北海道を台風が襲い、小麦や砂糖原料となるテンサイの生産が減った。
 同時発表された15年度の都道府県別で、岩手の自給率は110%だった。高水準を保つが、前年度より1ポイント落ちている。ほか16県でも下落し、天候不順が影響した。
 食料自給率が自然要因に左右される面は確かにある。気になるのは、それを強調するあまり、行政の危機感が感じられないことだ。
 政府は25年度に自給率を45%に上げる目標を掲げた。しかし今回で7年連続の40%割れとなり、達成は遠のく一方となっている。
 それどころか、自給率を政策目標とするのを見直す動きすら見られる。今年の経済財政運営の基本方針には、前年あった「食料安全保障の確立」の文言が消えた。
 危機感が乏しい背景には、カロリーではなく生産額を基準とした自給率は上がったことがあろう。生産額基準は、カロリーが低い割に価格が高い野菜が押し上げる。
 2年前から「食料自給力」の指標を出し始めたこともある。世界的な食料不足で輸入が止まっても、農地をフル活用して芋を生産する。それを主食にすれば国民は飢えないとの結果が出ている。
 とはいえ、カロリー基準の自給率は欧米の主な国で100%を超え、日本は先進国で最低水準にある。食料の6割を輸入しながら自立した国と言えるのだろうか。
 食料安全保障が叫ばれたのは10年ほど前だった。主要食料のトウモロコシが世界的にバイオ燃料に向けられ、各国が穀物の輸出規制を行い食料危機が高まった。
 麻生太郎首相は「自給率50%を目指す」と明言するに至る。旧民主党政権も50%を掲げたが、その後の安倍政権は目標が過大として45%に引き下げた。かつての危機感はどこへいったのか。
 さらに安倍政権は日欧の経済連携協定(EPA)などで農産物の市場開放を推し進める。食料安全保障とは逆を行く動きだ。喉元過ぎれば、とはこのことだろう。
 財政再建目標が示すように、別の目標を突然示し、本来目指すべきものを見えなくする。そんなやり方が政権には目立つ。国民生活に大事な食料で同じことは許されない。
 

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