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【茨城新聞】 クロマグロ規制合意 漁獲枠増は時期尚早だ

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絶滅の恐れがあるとされるまでに数が減った太平洋クロマグロの資源管理を関係国・地域が話し合う中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の北小委員会が、親魚の量の回復動向によっては今後、漁獲枠を増やすことも盛り込んだ新たな規制策に合意した。日本の提案が受け入れられた形だが、当面、達成すべきだとされた回復目標は低く、資源枯渇の懸念は払拭(ふっしょく)できない。
高級トロの材料として日本の市場で高値で取引されるクロマグロは乱獲によって資源量が急減。産卵能力のある親魚の量は約1万7千トン、漁業が本格化する前のわずか2・6%でしかないとされる。WCPFCは2024年までにこれを約4万1千トンにまで回復させることを当面の目標とし、30キロ未満の未成魚の漁獲量を02〜04年平均から半減させるといった規制を導入した。
委員会は「この回復目標の達成可能性が60%より低いと見積もられる場合には漁獲枠を厳しくする一方、達成可能性が75%を超えるとみられる場合には漁獲枠を増やす」との新たな仕組みの導入に合意した。
「資源管理への漁業者の積極姿勢を促すため、資源に改善の見通しがあるときは漁獲枠を増やすことを明確にすべきだ」との日本の主張に基づく。漁獲規制に対して国内の漁業者から不満の声が上がっていることが背景だ。
だが、約4万1千トンという依然として低レベルの当初目標に達成の見通しが立ったからといって、ほぼ自動的に漁獲枠の拡大を認めることは、資源減少のリスクを軽視するもので、時期尚早だ。
資源量調査や、それを基にした目標達成の可能性予測には不確実性が伴うし、気候変動など漁獲以外の要素で資源量が変動するリスクもある。予想外の事態が起こることも考えに入れ、漁獲枠の拡大には極めて慎重であるべきだ。
もう一つの重要な合意は「34年までに漁業が始まる前の資源量の20%にすること」を新たな回復目標として掲げた点だ。
約13万トンとされるこの目標の達成には、長期間にわたって手綱を緩めることなく、厳しい資源管理を行うことが必要となる。
日本では水産庁が導入した漁獲規制を無視した違法や無報告の漁業が横行していたことが発覚した。太平洋クロマグロの最大の漁業国であり消費国でもあることの責任を認識し、資源回復に一層の力を入れなければならない。国として20%目標を達成するための長期戦略を立てることも重要だろう。
クロマグロの資源がここまで急減したのは「安いクロマグロをいつでもたくさん食べたい」という消費者の志向と、大きくなる前の価格の安いクロマグロでも漁獲し、それに応えようという漁業者の姿勢が大きい。
だが、そもそもクロマグロはこのような大量消費と薄利多売のビジネスに耐えられるような漁業資源ではない。
今回の合意を、消費者が「責任ある消費」を心がけ、漁業者が「責任ある漁獲」を徹底させる契機としなければならない。国の規制をないがしろにする漁獲などは論外である。ここまで減ってしまった資源を回復させるには、長期間にわたる多大な努力が必要であるという事実を再度、確認したい。

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