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【中日新聞】 北の核 制裁と交渉で 週のはじめに考える

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 北朝鮮が六回目の核実験を強行した。相次ぐミサイル発射と併せ、核兵器保有にまた近づいた。米朝が交渉の席に着かない限り、危機は止められない。
 北朝鮮は特別放送を通じて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に装着できる水爆の実験に成功したと報じた。韓国気象庁によれば、北東部・豊渓里の地下核実験場付近でマグニチュード(M)5・7の人工的な地震が観測され、推定される爆発のエネルギーは昨年九月の核実験の五〜六倍程度になるという。 実験と発射凍結迫れ
 北朝鮮が主張するように、核実験が原爆よりはるかに破壊力が強い水爆だったのか、弾頭をICBMに搭載できるほど小型化に成功したのか、詳細な調査と分析が必要になる。だが、既に六回核実験をし技術、データを蓄積している。七月以降、通常の高度で撃てば米本土に届くICBMを二回発射した。
 トランプ米政権は北朝鮮が越えてはならない「レッドライン」を考えている。日米韓の専門家は、北朝鮮が米本土に近づくICBMを発射するか、米軍基地があるグアム、ハワイの直近海域に向けて中距離弾を発射した場合の二点だとみる。米軍が対抗して北朝鮮に対する軍事行動に踏み切るという見方が消えない。
 北朝鮮がラインを越えないよう、国際社会は制裁を強化し、併せて交渉の場に引き出す努力を続けなくてはならない。まず、北朝鮮に対し、核実験と各種ミサイルの発射を中止、凍結させるのが緊急の課題になる。
 金正恩労働党委員長は、核開発と経済発展の並立を目指している。だが両立はしないし、北朝鮮は一層孤立し、国民の生活は苦しくなり、体制も不安定になると理解すべきだ。
 国連安全保障理事会は八月、新たな制裁決議を採択し、北朝鮮の主要産品である石炭、鉄鉱石、水産物の全面禁輸を決めた。北朝鮮は制裁の「抜け穴」を利用して、核、ミサイルの資材や部品を入手しているが、最大の貿易相手国である中国が禁輸措置を履行すれば、軍事に回せる外貨資金源は確実に減少する。
 核実験を受けて、安保理はさらに厳しい制裁決議を採択することになろう。焦点は北朝鮮にとって死活問題となる石油禁輸である。禁輸を求める米と慎重論の中ロが激しい論争を続けるだろう。 イラン合意教訓生かせ
 朝鮮半島と東アジアの緊張で、最も懸念されるのは対話、交渉が実現しないことだ。対話がないと、北朝鮮と米韓の軍事的対立がさらに深まり、誤った情報と判断によって偶発的な衝突が起きる恐れが消えない。
 北朝鮮の最終的な目標は米国と平和協定を結び、金正恩体制の保証を取り付けることだろう。自らの要求を示すためには、近い将来、米国との交渉のテーブルに着くしかない。今回の核実験でICBMに搭載できる水爆の爆発に成功したと自負するのなら、むしろ今が交渉に臨む潮時ではないか。
 トランプ政権は軍事行動も含め、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と主張するが、北朝鮮がレッドラインを越えて要求をさらに高めれば、交渉はいっそう難しくなる。米朝対話に総力を挙げるよう強く望みたい。
 参考にすべきはイランの核をめぐる合意だろう。米ロ中に欧州連合(EU)の三カ国が加わって、イランの核開発を大幅に制限し、代わりに経済制裁を緩和することで妥結した。新たな核保有を認めない核拡散防止条約(NPT)は何とか維持できた。
 北朝鮮の核開発はさらに深刻で、トランプ大統領はオバマ前政権が取り組んだイラン合意には否定的だ。それでも、米ロ中も加わった関係国がイランの核開発にブレーキをかけ、国際社会との経済交流を促したという成果をもう一度検証し、教訓を生かす努力をすべきではないか。韓国と日本も含めた東アジアの関係国は、北朝鮮への制裁を履行しながらも、外交による解決を目指して意見交換を急ぐ必要がある。 政府は的確な情報を
 北朝鮮の中距離弾道ミサイルが八月末、北海道・襟裳岬上空を通過した。ICBMの飛距離を伸ばそうとするなら、日本列島を通過する発射を今後数回繰り返す可能性がある。
 だが、朝鮮半島で戦争が起きない限り、北朝鮮が日本または在日米軍を狙ってミサイル攻撃を加えることはあり得ないとみるべきだ。日本政府は八月末の発射を事前に探知し、核実験の兆候もつかんでいたようだ。
 国民がいたずらに恐怖感を持たず冷静な判断、対応ができるよう、政府は的確な情報を提供する責務がある。  

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