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【京都新聞】 無痛分娩  安心して臨める体制を

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 お産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)での事故が大阪、京都などで表面化したことを受け、厚生労働省の研究班が安全性の確保に向けた提言を年度内にもまとめることになった。
 働く女性の増加や出産年齢の上昇を考えれば、「産後の回復が早い」ともいわれる無痛分娩のニーズは今後高まっていくだろう。
 半面、無痛分娩は原則保険外であり、国がその実態を十分に把握してきたとは言い難い。詳しい調査を急ぎ、女性が安心して出産できる体制を整える必要がある。
 先月の研究班の初会合では、2010年以降の妊産婦死亡例の5%(14例)が無痛分娩だったことが日本産婦人科医会から報告された。分娩全体に占める無痛分娩の割合も年々増え、16年度は中間集計で6・1%と、08年発表の国推計値2・6%の2倍超に上った。
 一般の出産に比べて、無痛分娩の事故率が高いわけではない。フランスでは8割、米国では6割の妊婦が無痛分娩を選ぶという。
 ただ、総合病院での出産が主流の欧米と違い、日本では小規模な医院やクリニックでの出産が多い。麻酔の専門医が少ない事情もあり、未熟な医師が、母子の容体急変時の救命体制が不十分なまま、世の中のニーズや営利を優先して施術している可能性がある。
 無痛分娩は一般的に、脊髄に近い「硬膜外腔(がいくう)」に細いチューブで麻酔薬を注入する。注入箇所を誤れば、薬が効き過ぎて妊婦が意識を失ったり、母子ともに障害を負ったりすることがある。
 今年1月と5月に相次ぎ亡くなった女性のケースは、それぞれ大阪、神戸のクリニックでの施術後に意識不明になったという。京都では12年と16年に京田辺市の同じ医院で母子が重い障害を負った例が判明。家族が小規模な産科の安全体制に疑問を投げかけている。
 大阪と、12年の京都のケースはそれぞれ業務上過失致死、同傷害の容疑で捜査中だが、国や医学界も過去の事故を詳しく調べ、改善点を洗い出して再発防止につなげねばならない。研修や訓練による個々のスタッフのレベル向上に加え、産科と麻酔科の連携、大病院と診療所の間の緊急時のサポートなどを強化したい。
 日本では「痛みに耐えてこそ産んだ子に愛情がわく」との考えがあるが、妊婦の血圧の状態によっては無痛のメリットが大きい場合もあるという。医師は合併症などのリスクを十分に説明し、妊婦側もしっかり理解して選択したい。

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