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【中日新聞】 朝鮮人虐殺 歴史は抹消できない

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 歴史の事実は消すことができない。当たり前のことに、小池百合子東京都知事は疑問符をつけるのだろうか。関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者を弔う追悼文を出さなかった。真意を語ってほしい。
 
 近日所感
 朝鮮人あまた殺され
 その血百里の間に連なれり
 われ怒りて視る、何の慘虐ぞ
 大震災の混乱の中、多くの朝鮮人が無残に殺害された光景をモチーフにした詩人萩原朔太郎の三行詩。朝鮮人虐殺は動かせない史実である。
 市民団体が主催して一日に開かれたその犠牲者の追悼式に、小池氏は追悼文を送るのを取りやめた。地元墨田区の山本亨区長も、同じように送付を見合わせた。
 大震災の発生直後に「朝鮮人が暴動を起こした」といったデマが瞬く間に広がった。あおられた民衆が組織した自警団や住民が、朝鮮人を見つけ出しては殺傷した。
 知事名の追悼文は、少なくとも石原慎太郎氏の時代から歴代知事は毎年送ってきた。小池氏も去年は送ったではないか。
 こうつづられている。「極度の混乱のなか、多くの在日朝鮮人の方々が、言われのない被害を受け、犠牲になられたという事件は、わが国の歴史の中でも稀(まれ)に見る、誠に痛ましい出来事でした」
 知事として、負の歴史と正面から向き合う姿勢が伝わる。この追悼文が今年はなくなった。歴史に目をつぶり、学ぶべき教訓を無意味化するにも等しい。
 その理由を記者会見で問われると、小池氏は、大震災の遭難者を弔う都慰霊協会主催の大法要の場で「全ての方々へ哀悼の意を表している」と繰り返した。聞く限り、真意はよく分からない。
 災害による落命と、民族差別を背景にした虐殺とは性格が異なるのに、「不幸な出来事」とひとくくりにもした。虐殺の史実については「歴史家がひもとくものではないか」と述べるにとどまった。
 追悼式の会場に立つ慰霊碑には、六千人余という犠牲者数が刻まれている。それを疑う声はある。
 国の中央防災会議の報告書は、殺された朝鮮人らは震災全体の死者十万五千人余の「1〜数%」と推計する。虐殺の事実は否定できない。
 首都直下地震をはじめ大災害時に、小池氏は人命救助を指揮する責任を負う。人心を惑わし、暴走を招きかねないデマの拡散を防ぐのも重要な任務である。過去の教訓を蔑(ないがし)ろにしてはならない。  

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