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【京都新聞】 ハンセン病法廷  司法の過ちを検証せよ

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 ハンセン病療養所に設置された「特別法廷」で死刑判決を受け、元患者の男性の刑が執行された「菊池事件」を巡り、検察が再審請求をしないのは違法だとして、元患者6人が、国家賠償請求訴訟を熊本地裁に起こした。
 ハンセン病に対する差別や偏見から、患者の裁判は戦後、裁判所法が災害時などに例外的に設置を認める「特別法廷」で行われ、憲法が保障する裁判の公開原則や法の下の平等に反する疑いが濃厚だ。
 検察や裁判所は元患者の訴えを重く受け止め、再審手続きを始めて司法の過ちを検証すべきだ。
 菊池事件は1952年、熊本県内の村職員を殺害したとして元患者が殺人罪に問われた。無罪を訴えたが、菊池恵楓園(同県)などの特別法廷で死刑が言い渡され、57年に確定。凶器と被害者の傷が合わず、弁護活動も不十分だったとして3回の再審請求をしたが退けられ、62年に執行された。
 ハンセン病患者の特別法廷は1948~72年に95件あったが、最高裁は病状や感染の恐れなどを精査せず形式的に許可。医学的見地から患者の隔離の必要性はないと判明した60年以降も同じだった。
 背景には、国によるハンセン病強制隔離政策があったが、熊本地裁が2001年、隔離政策の違憲性を認めた国敗訴判決を出し、政府は患者に謝罪、和解し、国会も責任を認めた。一方、司法の対応は鈍く、最高裁は昨年4月、「不合理な差別的取り扱いで裁判所法に反する」として謝罪し、最高検も今年4月、違法な裁判に関与した責任を認めて謝罪した。
 ところが、最高裁は特別法廷の設置手続きの違法性は認めたが、「具体的状況が分からない」などとして「違憲」とは認めず、個々の裁判にも踏み込まなかった。最高検は「菊池事件」弁護団に「おわびしたい」と伝えながら、裁判記録が散逸しており「違反は認められない」として、再審請求などの手続きを行わなかった。
 違法性や差別的取り扱いを認めても、被害回復には取り組まないのではあまりにも不誠実に過ぎよう。しかも、問題を長期間放置しておいて、記録が失われたから再審の理由がないというのは、けっして許されるものではない。
 原告は「特別法廷で助長された差別や偏見からの被害回復を求める権利を侵害された」と訴える。元患者に対する人権侵害の回復は道半ばだ。裁判所や検察が過ちに真摯(しんし)に向き合わなければ、司法への信頼は失われるばかりだ。

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