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【岩手日報】 やまゆり園の再生 障害福祉充実の一歩に

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 陰惨な殺傷事件の現場となった知的障害者施設「やまゆり園」の再生はどうあるべきか。神奈川県障害者施策審議会の部会が、小規模施設の整備など「分散型」の方向で提言を取りまとめた。
 県は当初、現在地での全面建て替えの方針を示したが、全国の障害者団体から「時代に逆行する」などと反発が出たことを受け、部会を設置し議論してきた。県は部会の提言を踏まえ、近く再生基本構想を策定する方針だ。
 ただ、入所者の家族らは現地に大規模施設での建て替えを求めてきただけに、曲折も予想される。
 小規模分散型か、大規模施設か。重い知的障害の子を抱える本県の家族の受け止めは単純な二者択一ではない。
 「部会の提言と、入所者家族の思い。どちらも分かる」
 「『地域共生』が理念だけで、地域で安心して生活できるサービスもマンパワーも乏しいままの現状こそ問題」
 やまゆり園事件は、障害者と社会の分断の深さを浮き彫りにした。分断の背景には、障害者を大規模施設に隔離収容てきた長い歴史がある。1964年に県立施設として設立された同園は、まさにその時代の産物だ。
 同園の再生は神奈川県だけの問題ではない。日本のあるべき障害福祉の方向性を示すモデルであるべきだ。ここから深い分断を埋める一歩を踏み出さなければ、事件を乗り越えることはできまい。
 再生基本構想策定に際しては、利用者の意思を尊重し、家族の不安も解消できるように丁寧に進めてほしい。合意形成のノウハウを広く共有することで、全国各地の大規模施設でも地域共生を進める一歩につなげたい。
 ノーマライゼーションの世界的潮流を受け、日本も遅まきながら地域共生に力を入れ始めている。
 厚労省は本年度から4年間で、入所施設の障害者約13万人のうち約1万1千人について、グループホームなど地域生活に移行するとの目標を定めた。本県は2015年度末の施設入所者が2132人。本年度末までに1989人に減らす目標を掲げている。
 地域移行の大きな課題が、障害者本人の意思をどうくみ取るか。地域生活経験が乏しい長期入所者に、急にグループホームなどの選択肢を示しても、選ぶのは困難だ。
 部会は、利用者の意思決定支援チームの設置、丁寧な説明、グループホームなどの見学や体験の機会を適宜設けることなどを提言している。
 本人の希望を時間をかけて聞き取り、その意思を尊重して多様な生活の場を充実していく。地道な取り組みを、神奈川はじめ各地で進めることで、分断を埋めていきたい。
 

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