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【朝日新聞】 企業の金余り 使い道が問われている

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 企業が空前の高収益を上げている。先週発表された法人企業統計によると、2016年度の企業(金融・保険業をのぞく)の経常利益の総額は約75兆円に達した。リーマン・ショック前の好況時を4割近く上回る水準だ。今年度に入ってもこの傾向は続いている。
 長く不況にあえいだ日本企業が、ここまで立ち直ったこと自体は歓迎すべきだろう。問題は稼いだお金の使い道だ。
 企業全体で見れば、設備投資の伸びは頭打ちで、リーマン・ショック前の水準を超えていない。一方で積み上がっているのが、企業が保有する現金・預金だ。過去5年で約50兆円増えて210兆円に達した。
 金融危機を経験した企業が、万が一に備えて余裕資金を増やそうとする傾向もあるだろう。だが、企業の役割は資金を有効に使って商品を生み出すことであり、お金をため込むことではない。萎縮しているばかりでは存在意義が問われかねない。
 設備投資が盛り上がらないのは、人口減少が進む国内では消費の伸びが期待できないからだ、との指摘がある。確かに人口変動は経済に影響を与える。
 だが、そうであるのなら、企業は稼いだ金を手元に置いておくのではなく、働き手に還元することを考えるべきだ。
 企業活動で生み出された価値にしめる労働者の取り分の比率(労働分配率)は、近年、下がり続けてきた。労働者への分配が伸び悩めば、消費を増やす余裕はいつまでたっても生まれない。長期的にみれば、企業が自分で自分の首を絞めているのに等しいのではないか。
 デフレ脱却を掲げる安倍政権のもとで、企業は、法人税減税や大規模な金融緩和など政策の恩恵を受けてきた。その結果でもある高収益は、賃上げと消費拡大につながり、それが企業収益を押し上げる経済の好循環を生み出すことが期待されてきた。企業自身がその循環を滞らせているとすれば、何をか言わんやである。
 こうした状況が続けば、企業がさらなる税負担の軽減や、人件費を減らすことにつながる制度変更を望んでも、支持が得られることはないだろう。
 高収益を上げる企業には、一段と積極的な賃上げを期待したい。好業績に満足しているだけでは、いずれしっぺ返しを受けることを、経営者は銘記してほしい。政府が進める「働き方改革」の中で「サービス残業」をなくし、働いた分はきちんと支払うよう早期に徹底すべきことは言うまでもない。

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