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【福島民報】 【重陽の芸術祭】新たな驚きを楽しむ

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 「重陽の芸術祭」がきょう二本松市で開幕する。現代美術の最先端で活躍する作家が「重陽の節句」の9月9日から11月23日まで、秋の城下町を舞台に美を競う。普段目にする機会の少ない独創的な作品が並び、県内外から大勢が足を運ぶと期待される。芸術による新たなにぎわいづくりに注目したい。
 二本松のシンボルである霞ケ城の本丸跡にはヤノベケンジさんが制作した巨大な黒猫像「SHIP’S
 CAT(船乗り猫)」が立つ。黒猫は古来、船のネズミを捕り、幸運を呼ぶと船員に愛されてきた。福島復興への願いがこもる。360度に広がる眺望の中に現れる大きな猫は、見る者を驚かせる。
 ヤノベさんは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生後、作品を通して被災地の応援活動を繰り広げてきた。「霞ケ城は“天空の城”として有名な兵庫県の竹田城にも匹敵する景観を持つ。ここから全国に幸せを発信したい」と意気込む。
 二本松は芸術家でもあった高村智恵子の古里とあって、刺激を受けた女性作家らの力作も楽しみだ。刺しゅう美術家の清川あさみさんは、智恵子の生家に作品を展示する。「智恵子の生まれ故郷で感じたことを、作品に混ぜ込んで表現する」と語る。「智恵子の紙絵も見て勉強した」という切り絵美術家の福井利佐さんは、東北地方に伝わる「お飾り」(切り紙飾り)や鬼婆伝説にちなむ作品を安達ケ原ふるさと村に展示する。
 若い才能のきらめきも見逃せない。福島大で美術を学ぶ学生、院生らが運営を手伝いながら、自分たちの作品を制作している。100の妖怪の絵を上川崎の和紙に描き、10月14日に霞ケ城公園で開幕する菊人形の会場に並べる。
 芸術祭は2年に一度の「福島現代美術ビエンナーレ」が昨年、二本松市で催されたのがきっかけとなった。まちおこしに生かそうという機運が高まり、ビエンナーレに続けてさらに工夫を凝らし、13カ所を会場に展開する。美術の力が人々の心に火をつけ、まちを動かした。会期中、舞踊や朗読音楽劇、日本酒のイベントなども花を添える。
 本県は美しい自然や名所旧跡に恵まれている。この秋は美術を新たな魅力として加えたい。創造力の思いがけない輝きに出合えることが現代美術を鑑賞する喜びでもある。歴史ある街並みを巡り、個性的な美を見つけてほしい。全国から訪れるファンと住民らが、街角で芸術談議に花を咲かせる場面が見られたら、うれしい。(佐藤克也)

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