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【京都新聞】 おたふくかぜ  難聴リスク軽んじるな

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 おたふくかぜは、子どもに多い身近な感染症の一つだ。しかし、それによって難聴になるケースがあることを初めて知った人も多いのではないだろうか。
 日本耳鼻咽喉科学会が実施した初の全国調査で、2015、16年の2年間に、少なくとも336人がおたふくかぜの合併症で難聴になったことが分かった。
 専門家の間では患者千人に1人の割合で難聴になるといわれてきたが、詳しい実態はつかめていなかった。広く社会に注意を促す意味でも今回の調査結果は注目される。リスクを軽視せず、予防の在り方を考える契機にしたい。
 耳の下の腫れや発熱を引き起こすおたふくかぜは、ムンプスウイルスが原因で、せきなどの飛沫(ひまつ)や接触によって感染する。通常は1~2週間で回復するが、ウイルスの害が内耳の神経に及ぶと難聴になる。今回の調査で判明した336人のうち、日常生活に支障のある人は8割近くに上り、両耳とも難聴になった例が14人あった。
 いったん神経が障害を受けると回復は見込みにくいだけに深刻だ。補聴器や人工内耳を使えば聴力を補えるとはいえ、元通りというわけにはいかない。336人のほぼ半数が、5~10歳の子どもである点も見過ごせない。
 今のところ、この難聴を予防するにはワクチン接種しかない。海外では、はしかと風疹の予防を兼ねた三種混合(MMR)ワクチンを2回接種している国が多い。国内でも1989年から4年間、公費によるMMRの定期接種が行われたが、副反応として発熱や頭痛を起こす無菌性髄膜炎が報告され、中止になった経緯がある。
 現在、原則自己負担のおたふくかぜ単独ワクチンの接種率は3~4割にとどまる。日本耳鼻咽喉科学会は接種を推奨し、国に定期接種の対象に入れるよう求めている。副反応などのデメリットにも目を配りつつ、検討を進めてもらいたい。より安全性の高いワクチンの研究開発を後押しすることも重要だろう。
 はしかと風疹については2006年に別の混合ワクチンの定期接種が導入された。今もおたふくかぜの流行を周期的に繰り返しているのは、先進国では日本だけといわれる。
 自治体の中には子どもを対象に、2回接種にかかる費用1万数千円の一部または全額を助成している例がある。こうした取り組みもできれば広げたい。接種の利点とリスクを、保護者に正しく理解してもらうことも欠かせない。

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