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【陸奥新報】 弘南鉄道開業90周年「地域の足を未来へ」

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 南津軽地域や弘前市内の生活路線として沿線住民に親しまれてきた弘南鉄道(本社平川市)が、1927年9月7日の開業から90周年を迎えた。
 開業以来、沿線住民の地域の足として大きな役割を果たすとともに、地域の産業、文化の発展にも寄与してきた。
 開業当時とは公共交通機関を取り巻く環境も大きく変化し、利用者の減少で一時は路線存続の危機にも直面したが、地域一体となった支援もあって利用促進策がさまざま講じられ、現在に至る。長い歴史の中で根を張り続けてきた路線を今後も地域で守り続けていきたい。
 弘南鉄道は、弘前―津軽尾上間を一日6往復する蒸気機関車運行でスタートした。当時、奥羽線はあったものの、平賀、尾上方面への交通機関がなかった。そこで、のちに同社初代社長を務める菊池武憲氏が地域関係者と共に開業に奔走し、地域住民の悲願だった鉄路の開設実現にこぎつけた。
 菊池氏の五男で、6代目社長を務めた故樽沢武任氏は、かつて本紙インタビューに「弘前の中学校へ入るには下宿するしかなかった。そこでおやじが『子どもたちを日帰りで学校に通わせるため鉄道を敷く』といって会社設立、開業に奔走した」と述懐している。
 50年に黒石まで路線を延長し、弘南線が完成。70年には弘前電鉄を買収して大鰐線として開業した。「地域の産業・文化発展のための鉄道」という初代社長の思いが代々受け継がれ、沿線の地域発展を支えてきた。現在、弘南鉄道は弘南線(弘前―黒石)と大鰐線(中央弘前―大鰐)の2路線を運営している。
 ただ、経営は決して順風満帆だったわけではない。自家用車の普及やトラック輸送の発達に伴い、利用客数は徐々に減少。2013年6月の株主総会で同社は赤字経営が続く大鰐線を16年度いっぱいで廃止する方針を明らかにした。即座に弘前市が存続に向けた支援を表明し、関係自治体などで構成する大鰐線存続戦略協議会が利活用策を検討する中で廃止は免れた。現在も厳しい経営環境は続いているものの、官民挙げた路線利活用策で一定の利用促進効果がみられている。
 人口減少社会で今後も利用者の伸び悩みは懸念されるものの、同時に進展する少子高齢社会の中で、公共交通機関の需要は高まることが予想される。弘南鉄道創設時の関係者の思いを振り返ると、現代のニーズに見合った形で路線を核にした地域振興を図ることも可能だろう。引き続き利用者ニーズを的確に捉え、それに沿った交通体系を構築する努力も求められる。
 地域の足をどう維持、確保していくのか。経営側も地域も常にこの課題に向き合い続けることになるだろう。弘南鉄道90周年の節目を、路線の重要性を改めて認識する機会としたい。

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