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【河北新報】 東日本大震災 孤立への対応/近未来見据えて施策構築を

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 東日本大震災の災害公営住宅や防災集団移転先で、町内会など新たな自治組織をつくる動きが活発化している。
 震災から11日で6年半。国や被災自治体の復興施策の軸足はコミュニティー再生に移ってきた。個別支援を中心とした施策をどう面的展開につなげるか。国の新年度予算編成が動きだす中、より踏み込んだ施策が求められる。
 国は本年度、コミュニティーづくりを支援する「被災者支援総合交付金」に157億円を計上。避難者を含む被災者の「心の復興」に力を入れる姿勢を示した。
 宮城県は2015年度に「地域コミュニティ再生支援事業補助金」を創設、災害公営住宅の被災者が加わる町内会などの地域活動を支援する。
 一方で、行政主導の限界も見え始めた。地域組織への補助金の使途を巡り、被災者と元々の住民の間であつれきが生じるなど、逆作用を招くケースも散見される。
 コミュニティーづくりは住民の多様な合意形成を伴う。役所にノウハウがあるわけではなく、調整に不安を抱く町内会などが制度活用に慎重になることは想像に難くない。
 手をこまねいてばかりはいられない、危機的な数字がある。石巻市が昨年から今年にかけ、市内の災害公営住宅1373世帯を対象に行った調査によると、65歳以上の1人暮らしの高齢者世帯は32.3%で市全体の2倍超に上った。地域行事への参加状況を尋ねると73.5%が「参加なし」と回答した。
 被災者の社会的孤立は長期に及ぶ「緩慢な被災」と言える。そして、この現実は日本の近未来の姿を予感させる。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、35年の国内の高齢者単身世帯は762万世帯(15.4%)に上り、10年比で264万世帯増加する。社会的孤立は被災地のみならず、国民的課題だという位置付けをより明確に打ち出す時期に来ている。
 処方箋作りには地域住民、NPO、企業を巻き込むことが必須だろう。多様な主体による地域団体を育む政策誘導が重要になる。移動手段の乏しい高齢者を外に誘導するためのコンパクトなまちづくり、地域で循環する経済システムの構築など、あるべき方向性を示すことも必要だ。
 ベースとなる政策概念がある。旧民主党政権時代、当時の菅直人首相は「一人ひとりを包摂する社会」の実現を掲げ、孤立という社会リスクの急増に対応する仕組み作りを提唱した。震災で事実上、立ち消えとなったものの、当時の危機意識はさらに厳しさを増し、現実化している。
 被災地で進むコミュニティー形成の取り組みは、将来の社会的孤立時代に対応する「試金石」になる。持続可能な地域づくりは多くの国民の願いであり、日本社会の持続を占う鍵になることを、改めてかみしめたい。

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