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【読売新聞】 桐生9秒98 壁を破った快走を称えたい

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 日本のスポーツ史に残る快挙である。
 陸上の男子100メートルで桐生祥秀選手が、日本人として初めて10秒を切る9秒98を記録した。高い壁を破った走りを称(たた)えたい。
 新記録は、福井市で開かれた日本学生対校選手権で生まれた。持ち味の中盤からの加速が際立つ快走でゴールを駆け抜けた。
 これまでの日本記録は、伊東浩司選手が1998年に出した10秒00だった。それから19年を経ての悲願達成である。日本の陸上界は、新たな時代に入ったと言える。
 桐生選手は2013年4月に10秒01をマークし、9秒台は時間の問題だと期待されてきた。
 だが、何度もはね返された。一日でも早く9秒台を出さねばならない、という重圧があったのだろう。「やっと4年間くすぶっていた自己ベストを更新できた」との言葉には感慨がこもっていた。
 足踏みを続ける間に、ライバルが台頭した。山県亮太、ケンブリッジ飛鳥、サニブラウン・ハキーム、多田修平選手らだ。
 6月の日本選手権で4位に敗れ、世界選手権では100メートルの出場権を逃す屈辱を味わった。
 悔しさをバネに、自分が日本人で最初に10秒を切る、との強い思いが、今回の新記録につながったに違いない。しのぎを削る好敵手の存在がいかに大切か。そのことを実感させられる。
 人類が100メートルで9秒台に突入したのは、1968年だ。メキシコ五輪で、米国のジム・ハインズ選手が9秒95をたたき出した。
 以来、カール・ルイス選手ら、歴史に名を刻むランナーが、記録を伸ばしてきた。現在の世界記録は、ジャマイカのウサイン・ボルト選手が2009年の世界選手権でマークした9秒58だ。
 9秒台を出した顔ぶれを見ても、米国とジャマイカの選手が多数を占める。そこに日本人選手が割って入った意義は大きい。桐生選手は「世界のスタートラインに立てた」と語った。
 9秒98は、昨年のリオデジャネイロ五輪100メートル決勝で、7位に相当する。20年東京五輪での決勝進出も、夢ではあるまい。9秒台をコンスタントに出せるよう、地力の向上が求められる。
 他の選手への相乗効果も期待できる。桐生選手に負けまいと、ライバルが奮起する。それが日本短距離界の底上げにつながる。
 400メートルリレーで、日本はリオ五輪で銀、先の世界選手権で銅メダルを獲得した。東京五輪での桐生選手らの活躍が楽しみだ。

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