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【高知新聞】 【里親制度】なり手拡大へ具体策を

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 親の死亡や児童虐待、貧困などで保護が必要な子どもを預かる里親制度で、就学前の要保護児童の75%を里親の元へ―。厚生労働省がそんな数値目標を立てた。
 児童養護施設や乳児院などの施設中心から脱却し、家庭的な環境での養育の推進をうたった改正児童福祉法が昨年成立し、その趣旨を踏まえた新たな指針である。
 親と暮らせない子どもは全国で約4万5千人に上る。保護された約3万6千人のうち里親に迎えられたのは2015年度末で17・5%にとどまり、本県は13・8%とさらに低い。全国の里親登録数は1万組で、大きく増える状況にはなく、「75%」への拡大はハードルが高い。
 日本は先進諸国の中でも里親や養父母などによる子どもの保護は立ち遅れている。要保護児童の里親への委託率はオーストラリアが90%を超え、米英なども70%を上回るという。日本は国連の「子どもの権利委員会」からも施設頼りの是正を勧告されてきた。
 親の愛情やぬくもりを知らず、虐待などで傷つけられた子どもたちにとって、温かい家庭環境は心身の痛みを癒やし、安定した社会生活につながるはずだ。
 国内で里親が広がらない要因として、原則的に実の親の同意を必要とする厳格な要件などのほか、里親の経済的、精神的な負担の大きさが挙げられる。里親による児童虐待の事例も報告されている。
 血のつながりのない子どもに愛情を注ぎ、信頼関係を築いていく営みは決して容易ではない。
 法律上の親子の場合にしか認められなかった育児休業について国はことし、将来的な養子縁組を条件に里親にも認めるよう制度を見直した。特に共働き世帯が増える中で、里親や養父母などのなり手を増やすためには公的支援の拡充や規制見直しが必要になってこよう。
 厚労省は、養父母と戸籍上も親子になる特別養子縁組をおおむね5年で倍増し、年間千件以上の成立を目指すという目標も掲げた。そうした前向きな姿勢は評価されようが、現場で児童支援に携わる関係者からは掛け声倒れに終わるのではないか、との懸念も聞かれる。
 里親を増やすために実効性のある具体策をどう打ち出し、その財源をどう確実に手当てしていくか。里親制度を担当する各地の児童相談所の人的な態勢拡充なども重要なテーマになってくるだろう。
 「駄菓子屋のおばちゃんが気にかけてくれています。中高生も優しく声を掛けてくれ、近所の方もかわいがってくれます。地域の皆さんのおかげだと思っています」。県内で里親として初めて子どもを育てている女性が本紙「声ひろば」に寄せてくれた言葉だ。実感が伝わる。
 生まれた家庭環境の不遇に関係なく、子どもが健全に安心して暮らせる社会へ―。地域の理解と見守り、思いやりのまなざしが欠かせないことは言うまでもない。

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